ハンバーガーストリート

vol.6

◆ 帝都編 ◆

―― 都西 ――

'07.7.4 base updated
'07.6.26 THE GREAT BURGER updated

ZATS BURGER CAFE

[中野]
# 12

 日本のバーガー発祥の地・佐世保の味が東京の中野で味わえると聞き……ってなんだかテレ東の旅番組の導入みたいなのでやめる。ザッツバーガーカフェ、さすがに中野、そして中央線沿線の店だけあって、インテリア・店構えとも余念が無い。メニューボードをはじめとした手づくりテイストとポップな小物たちが満載の"ちょっと気になる"街のハンバーガー屋さんである。小物も満載だが、佐世保バーガーの由来はじめ、この店について紹介したあらゆる新聞記事・雑誌の切抜き、さらには佐世保のハンバーガーマップに至るまで、店の中にも外にも文字情報が満載で、毎度こうして食べに行っては公開する内容が正しいかどうかチマチマ調べている身としては、その手間が省けて大助かりなのである。ヤー今回は楽だワ。調査不要!

 明るいガラス窓に向いたカウンター席も良さそうだったのだが、店内は倉木麻衣がガンガンに鳴っていたこともあり、外壁にへばり付くようにしてどうにか並べられた外席に座ることに。佐世保バーガー\682。待つこと10分強、Mバーガー式にバスケットに入って登場。食べる前に「ちょっと潰してからお召し上がり下さい」とアドバイスいただく。上の画像はちょっと潰した感じ……なのだがこのバーガー、正真正銘の出来立てのアッツアツで、しばらく熱過ぎて持てない。撮影に4〜5分かけてもなお冷めず、むしろそれでちょうど適温というくらい、マジで熱い
 バンズはテッペンが平たく、今まで登場した中で言うとFバーガーに近い感じか。内側に窪みアリ、具の落ち着きに貢献している。それにしても具材のはみ出しっぷりが見事!やや斜に構えたトマト、そしてレタス――何重にも重なったレタスには、甘いマヨネーズソースがかかる……ココでようやく気付いた。このソースこそがトマトを甘く感じさせている原因なのである(これまで"トマトが甘い"と書いていた箇所は、おそらくそういうことなのだと思う)。オニオンはスライス。野菜だけで味わっても十分イケル美味しさとボリューム……というワケでアップにしてみたヨ↓どうかね、諸君?

 さらに分厚〜いベーコン――5mm厚の鹿児島産黒豚ベーコン、コイツは美味しいゾ!ちっとも辛くない。ハンバーガーに挟むのが惜しいくらいの逸品である。さらに栄養満点の赤玉エッグ……とは目玉焼きのコト(らしい)――なにしろ佐世保と言えばベーコンエッグ……らしいのである。トロ〜リとろけたチーズは黄色――そう、チェダー!(学習効果)。そして主役のパティは佐世保直送の国産100%、柔らかく、クセのない美味しさ。テリヤキ風な甘目ソースが絡まる……そう、ココの店はケチャップではなくソース。ベーコンの"塩味"やパティ表面のカリッとした"コゲ"――といったような味覚的"アクセント"は、このバーガーには一切ナイ。その代わり、至極自然な素材の調和が、このバーガーにさっぱりさわやかな味わいをもたらしているのである。これなら何個でもイケソ。なのでコッテリ好きには喜ばれないかも。\682はちょっと……という気はしなくもないのだが、他店も軒並みそれくらいの値段で出して来ているし、基本のハンバーガーは確か\350だったし、まぁ良いのかなとも。全メニュー、ジャンボサイズがある。ちなみに2号店が問題の中野光座にある……ナンデダッ?

2004.8.17 Y.M

ERIC'S HAMBURGER SHOP

[若林]
# 20

 駅で言うと東急世田谷線若林……になるのかな?三軒茶屋から世田谷通りを環七方面へ向かって歩くこと10分弱、通り一本入った目立たぬトコロにある。商店街の外れというならまだわかるが、きっと一通に違いない狭い路を隔てたお向かいも、そしてお隣も普通のおウチ。住宅街のマンション1F。ただちょい手前にちょい気になる和食処がポツとあったりするので、所謂隠れ家的紹介のされ方をされるであろう立地。どうして知ったかって言うと、そりゃあーもーネットの力よ!

 来店時の客:ゼロ。滞在中:イートイン1、テイクアウト2。退店時:ゼロ。珍しく2個食べる(理由はこの後すぐ!)。まずは店の名を冠したエリックスバーガー270円!(←理由)ワォ!安っー!(すっかり高級バーガーに慣れきっとる)。さして広くもない店内&キッチンなのに、注文頼むと誰に聞かせるんだかレジ脇から伸びるマイクに向かって復唱する。ココはバンズがふわっふわ――他サイトでもそう紹介されてるので、できたら避けたい表現だったんだが、やはりどうしてもそう言い表すよりほかない――押すと下に沈んで弾力でまた戻ってくる柔らかさ。表面ケシの実だらけ(あまり好きじゃない)。あと下のバンズ、多分意図的にちょっと傾斜つけてるよネ。中はマヨ、レタス、ケチャップ、マスタード、ミジン切りのオニオン――シンプルな構成。パティは薄くヨコに平ぺったい――こういうパティを以後わらじ系と呼びたい。パティの薄さと質感はマックに近い?……なんて言うとマックと一緒にすな!と怒られそうだが、断じてマックのようにドライではない。さりとてジューシーでもない。かぶりつく間際、仄かに漂う香ばし〜い匂いが好印象。

 2個目アメリカンクラシックチーズ(上の画像)、\390。こちらもお安い!8種類のトッピングのアメリカンベーシックって何だろう?上の5種類(パティ除く)+ピクルス、チーズ&トマトで8種類?ピクルスが甘くて美味しい!チーズは溶けてなくて、まんま"チーズっ!"て味だった。ピクルスもトマトもそうだけど全て切り方薄目。レタスもほんのわずかだし……というのもココ最近、軽く千円超えるような大作主義のバーガーばかり連戦してきたから思うことなのかも知れない。でも久々に子供のおやつ感覚のバーガーに巡り会えてちょっとホッとしたかな?ココはマヨ=ケチャ=マスタードの連繋が生み出す甘い味わいに特徴のある店だと思う。私の好きなウェンコの甘さに通ずる?でもやはり基本的にはマックのハンバーガーと類似の路線にあると説明するのが早いだろう――それは味が……質が……ということではない。抑えるところ抑えないとこれだけの低価格、なかなか実現できるものではない。なのでそこに「合理性」や「効率性」といった発想が持ち込まれる――という話において。全体的に「抑えてるな〜」という感じが伝わってくるのだけれど、その抑えた価格なりによく工夫された、美味しいバーガーだと思う。なにしろ安いですから〜!

 可笑しいのは私の滞在中ずっと、2人しかいない店員の一方がもう一方に向かって絶えずお説教を……と言うかなにやら文句を言っているのである。きっと私の来る前からやりあってたんだろう。とにかくずっとである。一方がパティを焼いてるときも横からずっーと何やらダメ出しを続けている。それがお客が入ってきたときだけ止む。そして注文を受け終わるとまた再開するのである……。イタリア映画のワンシーンのようで滑稽だった。BGMは今風当たり障りない有線洋楽ロックch。2000年オープン。

2004.11.22 Y.M

Baker Bounce

[三軒茶屋]
# 22

 三茶シリーズvol.2。東急田園都市線三軒茶屋駅から茶沢通りを代沢十字路方面へ7、8分。ERIC'Sよりは歩かない感じかな?しかしERIC'S以上に住宅街の只中に入り込む。店前の道路はクルマがすれ違える広さなので、なんでココに?感は少ない。なにせホームページが見事でして、それ故もっと大きな店を想像して行ったのだが、思いのほかこじんまりと間口狭く、ウナギの寝床。

 フレッシュネス的店内。(材は細いものの)による見事な空間構成。ペールグリーン(←多分……)に塗られた壁。陽気なブギウギやブルースがゴキゲンに流れる。店員は全員スタッフTシャツを着、首に赤いバンダナ、頭に黒いベレー。玄関マットも店のロゴをあしらったもので……金かかってるなぁ。卓上――マスタードはFrench's だが、ケチャップは透明な小瓶に小分けにされ、置いてある。

 チーズバーガー\997、チェダーで(Cheddar or Swiss)。付け合せのフレンチフライ、コールスローは付け合わせの名にふさわしい少量適量。この店ではオープンフェイススタイルと呼ぶ、例の上下に別れた状態で登場。中身はレタス、オニオンスライス、トマト、チーズ、ピクルス……と言うより"きゅうりの漬物"って形状のピクルス。そしてパティ。ぱたりと上下重ねると、まぁバンズのツヤツヤ感がまた見事!最近こういうツヤツヤ系が好みになってきた。レタスの上にはタマゴサンドで使う、ゆで卵を砕いてフィリング状にしたもの(コレ調べたけど、どうも決まった呼名がないようなのネ)が少量。

 さてこのパティだが「既製の挽肉を使用せず牛肉の各部位をブロックの状態から切り分け、 手作業によりミンチにし、炭火で焼き上げ……」例えれば居酒屋メニューに牛すじ煮というのがあるけど、あんな食感の肉を束ねて固めた感じかな?コレは美味しいゾ!ひき肉でないので特有のクサミがなく、代わりに"肉"の旨味たっぷりの肉汁溢れるジューシーなパティだ。しかもそれほどしつこくない。肉汁をよく吸ったバンズとの密着感もまた格別!通常無い食感ということで一食に値する。

 野菜陣も魅力的だ。立体的なアクセントをもたらすレタス&オニオンのこのシャキ感!タマラン!ピクルスは肉と野菜の間に潜んで、時折美味しい顔を覗かせる。パティから零れる肉汁はあなたの脂ギラギラなこってり心を満たしてくれるだろうし、新鮮野菜の歯ごたえはヘルシー派をも納得させるだろう。主張の強いもの同士が同居しながら見事にバランスのとれたバーガーだ。帰宅後サイトを見返して知ったんだが、あのケチャップ、2日かけてじっくり作った自家製ケチャップだったのだ。しまった……いつもの習慣でついかけずに食べてしまった……!

 帰り際にちらっとキッチンを見たら、鉄板のヨコに網が……あいつで焼いてるのかぁ、あのリーゼント頭のチーフが。

【二ッ目!】Baker Bounce [三軒茶屋] のベーコンチーズバーガー

2004.11.28 Y.M

The Maple Leaf

[渋谷]
# 27

 スポーツバーという分野はいつごろ確立し、広まったのだろう?なんとなく2度のワールドカップ(もちろんフランスと日韓、およびその予選)を通じて次第に定着していったように思えるのだが、大画面プラズマスクリーンに映し出される試合の経過に手に汗握りつ、ときに歓声ときに嘆声、そして涙!涙!その場に居合わせた見ず知らずの人たちと強い一体感を共有しつつワイワイガヤガヤ盛り上がる――こんな感じで新聞朝刊一面下のトップ記者のオッサンが書く文章とは差別化図れてる?――もちろん国内外のサッカーのみならずNFL、NBA、MLB……あらゆるスポーツ中継が流れる。初めて行ったときはMLB・ワールドシリーズ第4戦、レッドソックスが優勝を決めた試合のダイジェストを、元日に行ったらサッカー天皇杯の決勝を生でやっていた。

 コノ店のサブタイトルはカナディアン・スポーツバー&グリル――カナダから取り寄せた木材をふんだんに使った、暖かみのあるウッディな店内。壁にはホッケーチームのユニフォーム、スティック、スノボ。窓には真っ赤なカエデの国旗と日の丸。店に一歩足を踏み入れると、そこは国外。初めて来たときはちょっとだけビビッたものだ……店員含めほとんど外国人。周囲で交わされる会話は基本的に英語98%と思ってよい。白人男が下あご突き出し、瓶だけクイと傾けてビールをラッパ呑みしてる(わかる?)――でもアンタ、そのラベル一番搾りだぜ!(何か違う……)とにかく辺り一面サラウンドで英語!しかし!!オーダー取りに来る坊主頭の兄ちゃんはその辺の居酒屋チェーンのバイト張りに流暢な日本語で注文聞いてくれるから大丈夫。あと日本人の女性スタッフも一人居るし、キッチンを守っているのもどうやら日本人の模様。しかしそもそものコンセプトとして半ば外国人に向けられた店らしく、フライデーズハードロックカフェ以上に外国人遭遇率は高い。

 実は過去3度行って3度とも全く同じオーダー……ギネスのハーフパイントに炭火焼チェダーバーガー\1,100しか頼んだことがない。ココの特長はなにしろプレートの充実ぶりにある。まあ見てのとおりプレートの半分はオープンフェイススタイルのバーガー上下、1/4はフレンチフライ、残る1/4がサラダなのだが、そのサラダときたら!ブロッコリーにグリーンアスパラ、パプリカ、オリーブ……まぁ豪華、充実!昨年来「不要に思えてならない」と言っていた付け合わせだが、こんなサラダ付きなら大歓迎!ボリュームもたーっぷりで、このバーガーの1,100円ははっきり言ってお得!ギネスとあわせてたったの1,600円!おまけにスポーツ中継まで観れちゃう!!

 中身はまずレタスが来て輪切りのオニオン、ピクルス×2、トマト、程好くとろけたチェダーチーズ、そしてパティ――スポーツ中継中は実況音声が、中継のないときは音声なしの録画映像に有象無象のイマドキBGMがけっこうな大音量で流れる店なので、これまで一度も気付かなかったのだが、元日に行った折、曲間の静寂にペタペタいう音がキッチンから聞こえてくるではないか……ココもパティは手でこねてる!ただこのパティ、さほど柔らかくはない――と言うか、私の好みでゆくとちょい焼き過ぎかな?(もっとも外国人の舌を優先させている――という説も有り得るが)……初めて食べたときはそれなりに柔らかく感じ、好印象を持ったものだが、2度3度と行くに連れ、だんだん焼き方が強くなっていってるように感じられる。今度頼むときは焼き加減をオーダーしてみようか。甘酸っぱいピクルスはいいアクセント。ケチャップ&マスタードは必要かな。バンズはあまりに普通。派手な中身に比べるとやや物足りないか。

 まぁそんなこんなで、文章の長さが物語るとおり、まったく嫌いな店じゃない(←ニホンゴムズカシイネ……)。パティがふたたび柔らかさを取り戻すことを切に願いつつ――。とは言えVAIO相手に独りぼっちでホームページの文章打ってる……てぇのは正しい使い方ではないやネ。自分より英語堪能なお友達連れて、イザイザ!!

※こちらも気付いたら閉店。う〜ん……ポール・サイモン以上に時の流れを感じる今日この頃……(2007.7.7)

2005.1.5 Y.M

MADAM K

[新宿・富久町]
# 28

 店の入口に以前ウチで飼ってた愛猫とおんなじキジネコが丸まってたもんだから、店入るなり独りきりでホットドック作ってたマスターとネコの話を始めてしまった。マスターからすりゃあ(多分)久々入ってきた客がなにやら突然、猛烈な勢いでネコの話をしだした――ってトコかな?注文頼むまでに5分費やす

 厚生年金会館からさらに300m、御苑の近く、ちょと寂しいところにある(もはやバーガーショップの鉄則か)。入って手前にカウンターとキッチン、奥が客席――中2階ぽくなっていて、ちょっとワクワクする構造だ。階段上ってみると……う〜ん、微妙だ――ココは以前はイタリアンだったか、それとも南仏料理?地中海?ひと言で言えばサイゼリヤみたいな店内。天井にはしっかり青空が描かれている。フロアの中心にケチャップ、マスタード、醤油などの調味料を置く背の低〜い机、一隅は材料と思しき乾物類の置き場に、突き当たりの壁はさほど活用されていないであろうセルフの食器返却口に。さらには往年の映画スターの(アラン・ドロンとかグレース・ケリーとか洋画の)写真が額に入って壁一面に飾られている。チック・コリアやスパイロ・ジャイラのジャケも飾ってあったり。かと思うとマンガ本の棚あり、フランス人形あり、色鮮やかなるオウムの置き物あり……つまりは何でもアリ、置きたい物を気の向くままに置きました――って多分それだけ。

 さて肝心のチーズバーガー\460、表面カリッカリのバンズはそうね〜乏しい語彙の中から表現するならドトールのホットドックなんかの質感に近いかな?かなりドライな表面なのよ。ソフトフランス風?でもフランスパン的な弾きはなくて、歯を立てると歯の下でそのまま粉々に砕け散る感じ?その砕け方がまぁ天晴れ!このカリッカリ感が、ふんだんに折り込まれたレタスのパリ感とシンクロしてイイ感じ。ほんのり甘い生地。細かーく刻んだオニオンが入ったトマトソースはペースト状。パティはいたってオーソドックスなもの。そして盛りだくさんレタス。レタスの下にはサウザンドレッシングが振ってあったが、さほど強い味の主張はない。あーあとパティの上にちょっと隅に追いやられた感のあるチーズね。以上。ちょっとモサっとくる食感だけど、食べ応え十分。

 マスターが2階に上がってきたのを機にもう一つ頼んだ。今回の注文にもまたもや5分。話好きなマスター、自分以外客皆無という状況もあるが、バーガーメニューについての説明を熱い思いとともにたっぷり聞かせていただいた。でオススメの中から選んだのが塩焼きバーガー\460。パティは塩コショウだけの味付け、その上にオニオンスライスをふんだんに乗せていただく、ホントにシンプルなバーガー。オニオンは驚くくらい甘く、辛さも苦さも強烈ではない。半分はそのままいって、残り半分は薦められるまま自家製マスタードをかけていただく。適量かけると味が締まって良い。ボリューム過多でやや単調な気もするが、タマネギてんこ盛りな割りに口に残らず、案外さっぱりしてるのが良いところ。Fバーガーのネギミソ辺りとはそもそも考え方を異にしている。タマネギが最も甘いのは新タマの時期――と言われたが、私は新タマの時期がわからず、いつか?と聞き返したら夏場だとの答え。それはそれはホントに甘いらしい。そこまで言われるとベストシーズンにあらためて味わってみたくなる。
 とにかくバンズの歯ごたえと来たら芸術的!……あぁ今あらためて画像見返すとチーズと塩焼きとでは使ってるバンズが違うね。マスターに言わせるともっと美味しいバンズを使ってるメニューがあるらしい。今度ぜひ!と言われる。ただスパイスなどの刺激物を姑息に効かせていない分、最終的な盛り上がりと「食べた〜っ!」という幸福感にはやや欠けるか。素材本来の味を……というのはひとつキーワードのようである。

 BGMは最初ダンス系が流れていたが、マスターがチーズバーガー持って来たついでにどういう意図かジャズのチャンネルに切り換えた……それって客見て音楽決めてるってこと?そのお客はずっーと自分1人。そろそろ出ようかという間際にようやく、場所柄かヤンキー風2人が入ってきた。例のネコはまだ入口に丸まっている。飼い主に捨てられて野良になったのを見かねて、この店で食べ物の面倒みるようになったとのこと。肉を与えているらしく、まぁコロンコロンに肥えて!

2005.1.9 Y.M

サマーフィールド半蔵門店

[半蔵門]
# 30

 一見何の変哲もない、ただの間狭(ませま)なカフェという感じだが、そこは半蔵門、そこはかとなく漂うセンスの良さ。物理的・空間的には間違いなく狭いんだけど、しかし狭苦しさを感じさせないのが不思議。入口から奥まで真っ直ぐに動線が延び、右側がキッチン、左がフロア。フロアは手前半分が2人席の並ぶカフェスタイル、奥が食事用の4人がけ。入るとすぐ右手にパンの棚――会社概要には欲張りにも「ベーカリー・ダイニング・カフェ」と3つも併記してある。たまにウィィーン...という音が鳴るのは、真上の階でドリルでも使ってるからだろう……などと適当なこと思ってたら、MIWE社製のaeromatというオーブンの扉を開けたときの音だということが判明した。パンやピッツァはコイツで焼いてるワケですな。経営は所謂IT系企業。事業内容≪1≫コンピュータおよびインターネットワーク関連業務≪2≫翻訳およびユーザー・マニュアルの日本語化業務≪3≫飲食業務≪4≫美容サロン

 自家製ビーフパテとベーコンチーズのハンバーガーサンドイッチ\1,260。う〜む、出て来た料理がすべてでしょう。この盛り付け……今までの店とは違う予感。薄〜く上品にスライスしたオニオンにかかるローズマリー、コイツがポイント。香ばしい香りは同時にスパイシーなアクセントにも。バンズは丁寧にトーストしてあり、内側にバター。表面はベーグルのように硬くしっかりして、かじるとハリサクッと砕けて美味しい。ただバンズ的な弾力はなく、そうした意味から「ハンバーガーサンドイッチ」と断っているのかも知れない。中身は上から順番に前出のオニオン、その下でピクルスがまた甘〜いイイ味を出す(私の好み)。トマトはサウザンドレッシングの効果で甘さが引き立ち、野菜陣強力!トマトとチーズの間にベーコン。これがまた塩加減絶妙!で、美味しくとろけたチーズ。パティは気持ちよ〜くフワ〜ッと柔らかく、単体で食べても丸い……と思いきや、案外しっかりした塩味がついていた。これがハンバーガーとしてトータルで食べるとバンズやオニオンやチーズの力でまる〜くマイルドォ〜になるワケ。なるほど!これぞハンバーガーという食べ物の機能。その下にグリーンリーフ。ホテルのラウンジに出て来てもおかしくない上品さと、店のコンセプトにも通じる明るい開放感を持ったバーガー。見た目にも美しい。

 しかし付け加えねばならぬのは、3度行ったうち最初2回頼んだときにはベーコンが入ってなかったことである。アレ?確かメニューには……と思いつつ、入れなくなったのかな……などと適当に納得して食べていたのだが、今回行ったらなんと!普通に入っているではないか!?画像も正しいものに差し替えるべきかな?BGM――エンヤとか、昨年12月に行った折は時節柄、アリア風女性ヴォーカルがかかっていてクリスマスムードだった。飲み物が安いのが良い。スタバ的料金体系になっていて、カフェラテのグランデサイズは\400。ブレンドのトール\260。

 さて今回入口脇のカフェ席でVAIO広げてたら、6人連れが入ってきた。ココは店の狭さの割りに案外団体さんが多い。よほどファンが多いか、ないしは周りにあまり店がないからか――しばし奥で検討していたが結果、店員が私のところまで席を替わって欲しいと頼みにきた。もう帰ろうかと思っていた頃ではあったが、しかし大荷物だったので退散するには気まずい時間がかかり過ぎると考え、移動することに同意したところ、引越し後コーヒーをサービスしてくれた。やはり狭いは狭いので、席のやりくりには日々苦労しているようだ。

2005.1.15 Y.M

ZipZap

[明治神宮前]
# 48

 WOLFGANG PUCK EXPRESS以来の原宿。神宮前の交差点――表参道と明治通りの――をロッテリアのある一角に分け入って、渋谷区の神宮前出張所(併設:区民会館・敬老館・保育園)向かい。この辺りは古い民家・商店と"若向き"の洋服・雑貨・カフェetc.がごっちゃ混ぜになっていて、一種独特の風景を呈している。あるいはこれもまたアジアンな風景と言えなくもない。さてそんな中、まぁいまどきアメリカンダイナー。私が映画・TVで観た限りのイメージで言うと、ニューヨークの、クロスも貼ってない殺風景なアパートメントに引っ越してきた当日、とりあえず食事できるように……と机と椅子だけゴンゴンッとおもむろに並べ、ロウソクで食事も何だから……とコンクリ打ちっ放しの天井からシャンデリア吊るした――そんな感じ?でそのまま日々の生活が始まっちゃった感じかな?実際にはそこまでザックバランではないんだけど、何と言うか、上辺だけイマ流に合わせました……ってな上滑りなオシャレではなくて、どことなく人の温かみの感じられる?そんな雰囲気がコノ店にはある。多分その辺、何処ぞのホテルと違ってスタッフが懇切丁寧に、詳し〜くハンバーガーの説明をしてくれたり、気軽に質問に応じてくれたり、そんな親身なサービスを心がけていることが、お店の空気にも表れているのかなぁと。"おもむろに"並べた背がこげ茶色の椅子はコレ、けっこうカワイイかも。ソファの奥行きがまた広いんだなぁー(独りで来てよかった!特等席!)。カウンター2ヶ所、ひとつは一段上がった位置にキッチンを囲むようにして。

 クラシックバーガー150g\1,700。トッピング各\200。これが土日のブランチだと、チーズ標準装備+スープ&サラダで\1,700――お得!写真はチェダーチーズとソテーマッシュルームを加えたもの。バンズの上から竹串が突き通り、crown は斜めに。撮影し終えた頃合にスタッフが来て2つに切るかと訊くので「とんでもない!ガブッといきます」と返すと、そのまま美味しい食べ方の説明をしてくれた――まず竹串を刺しなおしてバーガーを真っ直ぐにし、上からギューッと押す。ソースがこぼれ出すくらいがバンズと中身がよく馴染んで食べごろと。この状態でバーガーパックの中に移し、竹串を抜いて、さぁどうぞお召し上がり下さい!白いバンズは表面白ゴマ。甘くてややウェット。裏面がカリッと焼き上がっていて気持ち良い。中身はゆで卵をシュレッドしたの(名称不詳)と薄いオニオンスライスにマヨネーズ絡んだの、トマト、パティの上にチェダー。でソース――「フォンドヴォー(仔牛の骨の出汁)をベースに野菜とトマトをふんだんに使い3日間かけて煮込んだオリジナルソース。フォンドヴォーベースだけに味は上品で控え目。パティの下に3層ほどに折り畳まれた青々したレタス。んで「黒毛和牛ステーキ用ロース部位を使用した、つなぎを一切入れてない」パティだが、ミディアムでも赤身が多く、ミディアムレアならもっと多い(←当たり前だ!)焼き加減。まるで半生食べてるような柔らか〜い食感。レア好き・寿司好き・刺身好きにはたまらんでしょう。粗い感じを残しつつ、とても柔らかい、でも粗い――ちょっと不思議な新食感。そしてそんなに熱くない。この半生パティのほのかな牛肉クササに合わせるように、ソースはじめ他の材料の味付けもきわめて繊細。強烈な刺激やパンチがない代わり、落ち着いた、マッタリとしたバーガー。

 heel は見た目には立派に見えたのだが、↑これだけの内容物を上に載せてはとてもじゃないが堪えられないらしく、上まだ1/4を残した状態で既に無くなってしまった。食べ方にもバランス感覚が必要なようで。きゅうり半分まんま出てくるピクルスは、スライスしては味わえぬ皮の弾力が楽しい。BGMはビートルズ、イーグルスのベスト盤など――ちょとストレート過ぎやしない?スイーツも充実、原宿裏通りのオアシスとしてちょっと一息つくには持ってこいかも。昼間もいいがちょっと物憂げな夜の雰囲気も捨て難い。オープン'04年9月。

2005.4.8 Y.M

DELI & BAKING,CO.

[下北沢]
# 50

 下北。北口。とりわけ下北らしい一帯(だが住所は北沢)。横浜銀行のある細い路を、上下左右にオシャレな古着屋・雑貨屋・カフェを何軒も見やりながら、奥へ奥へとズンズン進んでゆく。今回のお目当ては、新宿・吉祥寺に店を構えるSunday Brunch(サンデーブランチ)というスイーツの充実した雑貨併設カフェの、下北沢店1Fにある姉妹店。店名の如く、種類豊富なパンそして惣菜・サラダで有名なお店。例によって床・天井ともコンクリ打ちっ放しの空間に椅子と机が配置されているのだが、その置き方は"雑然"という言葉がふさわしく、広々しているわりに案外ゴッチャリ感が強い。ひょっとすると真に落ち着ける席というのはごく限られているかもネ……。窓が大きい上に日当たりも良く、行くなら休日の昼間が最適。

 チーズバーガー\750、お供にアイスカフェラテ。表面にツヤのある、白ゴマを振ったバンズはやわらか系。特に強く焼き込んではいない。バンズの下に甘〜いチリソース。チーズは黄色いチェダー。パティはハンバーグ――コロンと丸く、つなぎを用い、中に玉ネギの入ったモノ。表面の黒いコゲ目が一層ハンバーグ感を高めている。パティの下にトマトが来て、レタスと言うかサラダ菜かな?見るからに健康志向!という感じをこの葉一枚で演出している。付け合せはベイクドポテトにピクルス。全体としてはチリソースの甘さの占有率が高く、そこにハンバーグが絡むとトロミの付いていないミートボールみたいな感覚が生れる。中のハンバーグのサイズに合わせ、バーガーとしてそんなにヴォリュームはないかな。わりとツルッと食べられる大きさ。まあはっきり言ってしまえば、ハンバーガーより美味しそうなメニューは他にいくらもあるので、カレー、BLTサンド、クロックムッシュ、シュガートースト……目を惹いたモノに素直に飛びつけばよろしいかと。BGM――クラブジャズ系が心地好く、クールに、ただし朝っぱらからガンガンと。サンデーブランチのサイトの不充実振りは悲しかった。

2005.4.11 Y.M

standard deli

[新宿]
# 51

 イヤーやっとこサありつけたマスト・ハンバーガー。ココを抜きにはコノ企画は成り立たんだろう!というくらいの巷の人気店。新宿南口島屋タイムズスクエア向かい――ま、場所が場所ですから……。ちょっと私にゃ手の出ない高級セレクトショップJOURNAL STANDARD3F。外からよく見える、テラス一角の銀色の丸い屋根……おぉっ!調べてみるモンだ!コレ、エアストリームと言うキャンピングトレーラーなのネ?(注:あるいは模したモノかも知れません)パット・メセニー・グループの『アメリカン・ガレージ』というアルバムのジャケ写に同様の物体がいくつも写っているのは前からよく知ってたんだけど、まさかコイツをエアストリームと呼ぼうとは!……ってなんでそんなに驚いてるかと言うと、上記アルバムの中で最も好きな曲が"AIRSTREAM"という曲だからなのである……ホォー、そーゆー意味だったのか!ってコノ曲名、思いっきり企業名でないの?で、ハンバーガーなどはコイツの中で調理している――そりゃ〜キャンピングトレーラーですから。つまり、ま、屋外でキャンピングな気分なワケですね?雨の日は大丈夫なのかなぁ……とふと思ったけど、ちゃんと屋根伝いに店内まで行き来できるようになってるみたい。ただ横なぶりともなればどうだろ……。とにかくコノAIRSTREAMから、黒胡椒振った肉の焼ける香ばし〜い匂いが引っ切りなしに漂って来るモンだから、モォ〜たまらん!!

 店へと至る、フットライトが目茶目茶渋いシックな階段を登りつめると、意外やポップな店内。雑貨売り場兼、そして随時エキシビションが催されているらしく、壁は穴開きの展示パネル。店内は大きく3つのスペースに分かれる――最も奥は昼でも抑えた照明で雰囲気重視、どの椅子も机も背が高い。床は木。一段高いスペースは奥から続く抑えたライティングとテラスから入る自然光とが半々。石の床。AIRSTREAMのある見るからに気持ち良さ気なテラスは……喫煙席だったのネ!ややガッカリ感……。BGM――基本的にはカフェ系(?)など。並ぶほど混み合う休日だと何流してるんだかさっぱり聴こえない。ま、平日にゆっくり来たいネェー。スピーカーはJBL

 チーズバーガーセット、スタンダード100gで\1,050、ポテト・ドリンク付き。100gの実量以上に見た目のヴォリューム感!このぉ見せ上手!!久しぶりにドーム型のフカーッとした胚芽入りバンズ。湿度も関係しているかも知れないが案外ウェットで、蒸しパンぐらいを想像してもらって一向差し支えない食感。皮もサクーッという感じではない。甘い。細か〜く刻んだピクルスはアメリカンスウィートレリッシュ。パプリカ・粒マスタードなど入ったマヨソースはアメリカ製、コノ甘い味が全体を最もリードしている。チーズは隠し味程度。ケンネ脂を少し混ぜてあるパティはほんのりガサ系、やや塩味。旨味は薄目。黒胡椒の香ばしさとマッチしてどちらか言うと地味目なイイ味を出す。パティの下にオニオンスライス、トマト、レタス。下のバン(heel)にはマスタード。付属でHEINZ のケチャ袋。マヨソースの甘味とパティの塩味がゆる〜く、穏やか〜にペースを作る。バリバリ、ガツガツしたところのない、悠然とした感じがお店の空気ともよく合い、魅力的。ヘルシーにまとめたバーガー

 (例によって)大元にベイクルーズという会社があって、地図を見ると新宿の至るところに関連のショップがある。さらには都内各所・横浜・名古屋・幕張・大宮……そして今春、standard deli渋谷店がオープン!新宿店は'00年から。なので5年前からデフレマック"駆逐し返す"存在として密かな人気を呼んでいたワケ。コノ手のカフェ(正しくはデリなんでしょうけど)にしては抑えた価格設定で、しかもコノ立地を考えたらコストパフォーマンスは非常に高いと思う。非新宿的快適空間

# バンズ― 峰屋 [東新宿] ◆ vol.2 峰屋の考えるバンズとハンバーガーの未来形

2005.4.14 Y.M

WeST PArK CaFE

赤坂店
[永田町]
# 54

 流行ってんだか・ないんだか分かんないけど、とにかくむかーしからある赤坂東急プラザの2F。外堀通りに面した広々した廊下とオープンテラスを前に、季節も良くなってきたのでバーンとファサード全開の、間口の広ーい開放的なお店。奥行きのある店内、一番奥から表まで遮るものなくドドーンと一直線に見渡せて、見晴らし良好!こういうのも気持ちイイね。レンガ壁、天井黒塗り、床打ち放し。カッチリした印象の"カフェ"と言うより"ダイナー"。TVモニター+プラズマスクリーンが4台ほど天井から吊り下がり、音ナシで映画など流してる。ディナーモードはクロスの上にテーブルとサイズどんぴしゃの紙が敷いてあり、席が空くとまるめて破棄、また新しい紙をセットする……紙屋に寸法指定して切らせてるんだろうけど、何気にコストかかってんじゃない?(そりゃベラボーにはかからんだろうが)。日曜の晩、空いててゆったり、居心地も良好!

 W.P.C.バーガー\1,155。EXTRAチーズ\105――アメリカンを選択。ゴマが焼けて香ばしいバンズ、サニーレタス、マヨドレ、トマ、レッドオニオン、チーズ、パティ、バターを塗ったバンズ(heel)。付け合わせはフレンチフライにピクルス×2。レッドオニオンは半生くらいに火が通り辛さが飛んでジューシーに。同じくジューシーなトマトと良い相性。220gパティはさすが肉厚。焼き方ミディアム、中はまだ赤い部分も残る焼き加減だが、けっこう締まった感じ。されどガサパサし過ぎることなくジンワリ地味〜ぃに脂が滲み出してくる。チーズはやはり存在薄。別段はっきりした味付けはないが、ケチャップもマスタードもなしでそのまま食べる。ホントはちょっと欲しくなるんだけどね……でも、かけたところでケチャップの味になってしまうので……。

 別日、掲示板>おおやま氏のリクエストに答えるべく、グリルシュリンプ&マッシュポテトバーガー\1,260を。前回スタッフから説明受けたときには「パティも挟まってる」って話だったんだけど、違うゾ>店員!中身はバンズの下にマヨ、シュリンプ、アボカド、マッシュポテト、サウザンドレ、トマト×2、サニーレタス――以上。パティがサンドされていない時点でコレはバーガーではない。バーガーでないコイツの写真だけアップされてるってのもおかしな話なんだがゴメン、W.P.C.バーガー、暗くて上手く撮れなかった……後日撮り直して追加しますんで。 ※後日、追加しました。
 マッシュポテトなんて形のないモノ挟むうえにアボカドなんてツルッツル滑るモノを入れるもんだから、バーガーパック前提でないと成立し得ない型崩れバーガーが出来てしまった。シュリンプ&アボカドという組み合わせはシズラーにもあるけど、確かによく合う。大ぶりなシュリンプが美味しくてね〜。エビのプリ感アボカドのとろみ、そこにマッシュポテトのふんにゃりソフトな包容(?)が加わり、それらをサウザンソースと甘いトマトが下からしっかり支える――って構成。コノ場合シュリンプがパティ代わりになるんだけど、イヤー意外な発見だったネ!コロッケなんぞ挟むよりよっぽどイケてる。オススメ。

 代々木上原に1号店。丸ビルにも入っており、そしてなぜか大宮そごうにも。各店微妙にメニューが違うらしい。テーブルチャージ10%とるんだけど実際サービスは……まぁイイや。BGM――夜はコンテンポラリー系、昼はレゲエ――って店、けっこう多いネ。

2005.4.26 Y.M

FUNGO

[三宿]
# 57

 三軒茶屋と池尻大橋の中間、三宿の交差点から世田谷公園の方へと歩くこと10分――なのでどちらの駅からも都合20分。特に名前のないコノ通りに面したサンドイッチカフェ。サンドイッチが25種類、対してバーガーは4種類――なのでサンドイッチカフェ

 白と青で統一されたさわやかな店内。すっきりとしたモダンなデザインの椅子が並べられ、通りに向いたテラスも気持ち良さそう。ただ、あまり掃除が行き届いていないのと、水に氷が入っていないのと――因みにこの後入った近くのカフェでも水のグラスに氷はナシだった。三宿ではトレンドなのか?――アイスティーの氷がすぐ溶けてしまったのと――多分これは気温にも因るだろう。オープンエアにしてからクーラーを入れるまでの季節は、年間通じて氷の溶け方が特に早い時期の筈である――ちょいと気にはなったのだが、まぁいいや。BGM――納涼を誘うクラブ系ブラジルorジャズが。チーズバーガー\1,300、白いふっかりバンズ、マヨ、チーズ、パティ、オニオン、トマ、レタ、ホースラディッシュ(西洋わさび)ソース、バンズ(heel)。パティは適度な粗さと肉汁、焼き加減も良くてとても美味しい。だのに……だのにぃ……

 そもそも運ばれてきた時点ですでに下のバンズ(heel)はすべての積載物の水分を一手に引き受け、ブヨブヨのスポンジ状に……こんなバンズ美味しいワケがない。わかる?食パンを牛乳に浸したようになってるワケ。グリルしたオニオンも甘くて美味しいし、チーズもパンチが効いてて美味しいし、真っ赤なトマトも良い味だし、葉肉の厚いリーフレタス(不勉強につき品種不詳。御免!)もボリューム満点でヘルシーそのものなんだけど、多分ねぇ……そもそも挟んでるモノの量が多過ぎるのだよ。もう初めの一口目からバーガーは崩壊していて、トマトは後退し、レタスは前のめりして、全内容物を一時(いちどき)に口に入れることが出来ない。所謂グチャグチャの快感を通り越してもー目茶苦茶!破片を拾って食べてゆく感じ?ミレーじゃないんだから。

 下バンズ(heel)の決壊に続き、程なく上(crown)も飽和点に達し、サンドの意味が無くなってしまった。個々の素材は抜群に美味しいワケなのだから、もう少しサイズダウンして作っても、いやサイズダウンして作った方が絶対美味しいと思う。初めてフォークとナイフを使って「食べねば」という気になったバーガー。美味しいパティをオニオンとトマトと合わせて食べたいのに、まずはそれらをフォークで掻き集め、パティの上に載せてから食べないといけないという、この虚しさ……。一度組み立てられた食べ物をフォークの先でグズグズと崩しながら口に運ぶというのも気持ち良いものではない。但し、欧米人には器用に切り分けて食べる人もいるので、その辺ひとえに慣れ(習慣)もあるだろうか。

 これだけグジュグジュに崩壊するバーガーをサーブしておきながら、おしぼりが一つしか出てこないというのも気になる。その辺り、世の情報にやや遅れているようにも感じられるのだが……いや、それもこれも美味しかったからこそ言うことなのである。モノは確か――なのでバーガーが崩れぬよう、竹串とバーガーパック持参で臨めば、きっと存分に堪能できることだろう。

# 123 GORO'S DINER [外苑前] ☆
# 136 AS CLASSICS DINER [駒沢大学] ☆

2005.4.30 Y.M

FUJIMAMAS

[明治神宮前]
# 59

 ココも神宮前の交差点をロッテリアのある一角に突っ込めば、じき辿り着くだろう店。とにかく昼間っからパーティーやってるような雰囲気の店を目指して進めばよろしい。global asian fusion cuisineのお店。そもそも店名からして日本在住の外国人に向けられた店というニオイがあり、実際サイトを開いてみてもデフォルト表示がenglishだったり、オーナーが外国人だったり、現場スタッフも外国人が多数を占めていたり……なのでなんとなく通りがかる度外国人の巣窟的イメージで見ていたのだけれど、入ってみると日本人もけっこう多く(やはり女の子2人組率が高いネ)、中には家族連れもいる――こういうトコに子供連れてくるなんて、お父さんとしてはカッコイイよなぁ〜。吹き抜けの2階建てはもとは畳屋の作業場だったそう――但し今はその面影はない――インテリアは国籍不詳のエイジアン――ま、東南の方角であることには間違いない。連休中ということもあり、お店は大にぎわい――いや、いつもだな。案内されたのは木のベンチの一隅。傾いた木の机。バーカウンターの中には頭皮露出の黒人バーテンダーが見える。奴がシェーカー振るのか……。あらためて夜来たいですナ。

 フジママス特製バーガー、グリルドオニオン、チーズとアジア風トマトサルサ入り\1,300。見渡すと頼んでる人、けっこう多い。日本人の女の子がフォークとナイフでバーガー食べてたけど(外人サンもネ)、んん〜やはり美味しそうには見えないなぁ〜。一度組み立てられたものを崩すという意味においてはにぎり寿司をシャリとネタとにばらして食べるのと一緒だぞ!ないしは太巻きを二つに割って、玉子だけ箸で選って食べるとか。

 "外付け"サニーレタスにレッドオニオン&トマトをパティの上に乗せて。白いバンズは裏にバター、でコリコリした大粒な肉感のパティ。パティの上にはよく溶けた白いチーズとアジア風トマトサルサと思われるソースが。こいつは麻婆春雨的な味がする……まぁ麻婆豆腐でもいいんだけど。このユニークなエイジアンソースが不必要に我を張ることなく、バーガー全体をうまくまとめてフジママスオリジナルのバーガー体現に貢献している。まさに他では味わえないワン&オンリーなエイジアンバーガーだ。これは試す価値あり。付け合わせ"が"グリルドオニオン。

 おともはライチ風味のアイスティー\700。BGM――基本的にクラブ系が、ときに物憂げに、ときに涼しく。いかにも外国人の溜り場らしい開放感ある空気の中で、昼間っから乱痴気気分(??)でカクテル傾けハイになるのも悪くない……いや、イイ!!

2005.5.3 Y.M

ANDERSEN

青山アンデルセン デリ&サンドイッチバー
[表参道]
# 60

 アンデルセンの話を始めると長くなる。詳しくは株式会社タカキベーカリーのサイトあゆみ」のページで、その輝ける歴史を是非一度ご確認いただきたく――。元は'48年、広島でタカキのパンというパン屋から始まった。いまやグループ5社――根っこはタカキベーカリー。中国地方に行くとコンビニ・スーパーで例のアンデルセンの、ワコールみたいな赤いマークの入った袋詰めのパンが「タカキベーカリー」として売られているのを目にするだろう。袋パンだからと、こいつをヤ○ザキなんかと一緒に思ってはいけない。さらに言えばヘタなパン屋よりよっぽど美味しいのだ!ある畜産農家ではブタの飼料として食パンのミミなどをパン工場から貰ってくるそうなのだが、ヤ○ザキは添加物が多くてダメ、日持ちはしないけどやっぱりタカキが一番……なんて書いてる人もいる。ブタにもやさしいタカキベーカリーのパン!で、店舗製造・ブランド展開したものがアンデルセン、そのフランチャイズがリトルマーメイド。あとカフェデンマルクも、チョコレートのジャン=ポール・エヴァンも。本社広島。確か広島市民球場のライトポールがリトルマーメイドでレフトがアンデルセンだったかな?

 株式会社アンデルセンは会社は一つなんだけど、サイトでは「広島アンデルセン」と「青山アンデルセン」という書き方がされている……なんか将軍家みたいネ。広島アンデルセンは歴史的近代建築・旧三井銀行広島支店の建物を使用。東京の総本山、青山アンデルセンはご存知表参道。でそのB1Fデリ&サンドイッチバーでアンデルセンバーガー\750が食べられると。イブニングメニューにも類似のバーガーがあるが別物?B1Fは軽い(簡易的な)イートインスペースくらいな感じ。天井の高い、明るい空間。デンマークレッド(――そんな色無いと思うが。コノ赤、丁抹王国では何か呼び名あるのか?)に塗られた椅子、相席(つまり独り)を前提とした横長の木のテーブル。今の新しいロゴマークや最近の店舗の作りに共通するちょっと無機質なテイストで、あまり落ち着ける感じでもないが、こういう場所こそ穴場というのだろう。さてアンデルセン、なにせ「カメラ、ビデオでの撮影もご遠慮ください」をわざわざホームページで断るほどの念の入れ様・手回しの良さである。ここまで見事に禁じられてはむしろ痛快!止むを得ませぬ……立石バーガー以来の食べる場&撮り場探しを……

 アンデルセンバーガー\750、バーガーパックより高価なのではないかと思われる、2枚重ねの大きなサンドイッチ用包装紙に包まれ。グラハム地のバンズは薄く平たく、かつ硬めの食感で、どちらかいうと"サンド"かな。端がサクっと気持ちよい。ピクルスではなく生のきゅうりにみじん切りオニオン、その上からマヨがかかり、そして硬くてゴロッとした肉質のパティ。ちょとガサつくが、味は悪くない。さらに薄味がナイスなベーコン、トマ、レタ、ふたたびバンズ。ベーコン・トマト・レタス――三者揃い踏みしているところを思えば「B.L.T.サンドwith パティ」くらいな呼び方が適当かも知れない。野菜はどれも――特にみじん切りオニオンの――後味がさっぱり爽やかで、鮮度といい、美味しさといい、さすがはアンデルセン!きゅうりが酢漬けでなく、生(正確には軽く塩で揉んであるかな)を使うだけでヘルシーさがグンと増すのネ。最終的にはこのきゅうりの印象が特に強く残った。テイクアウトということでカップに入れてくれたのは……ケチャと粒マスタード。おともはスタバのアイスタゾチャイティーラテ、tall\390。

2005.5.6 Y.M

Bis!cafe

[渋谷]
# 61

 映画にハンバーガー?――スポーツ観戦や映画鑑賞というと、どちらか言うとハンバーガーよりホットドックかなぁ……なんて正直思うけど(ココでもこんなコト言っておきながら……)、ま、ハンバーガーだって無かぁ無いでしょう。ココ渋谷は毎年秋、東京国際映画祭の会場となる、気が付けばすっかり映画の街――

 文化村通り、東急本店前。シネ・アミューズという映画館のロビー横にあるカフェ。映画館と言ってもビルの4F、いわゆるミニシアター系。このカフェが食べ物の売店も兼ねているようで、上映前、ドリンクやスナックを買い求める人はコチラで購入。しかしさすがにと言うべきか、残念なことにと言うべきか、どうもバーガーを買い込んで映画鑑賞しよう――という人はいないようである。サーフボードやヤシの木がオブジェの、ちょっとガランとした60'sアメリカンなお店。売店兼という性質上、二方には壁がなくロビーの空間と繋がっている。なのでちょっと囲われた一隅……という風なのだが、しかしこのカフェは映画の世界からは完全に切り離されていて、店内に上映中のポスターがデカデカと貼られていたり、上映中の映画のサントラが延々流れていたり……という場ではない。代わりにBGMには、つま先立ちのツイストやロックンロールがループして……(多分有線)。「映画鑑賞前のお待ち合わせや、ご鑑賞後の語らいの場にぜひご利用ください」とはあるものの、上映前も後もカフェ内の人口密度にさほどの変化はなく、常にゆとりと落ち着きを保っていて、案外隠れ家として悪くない。2席だけソファの席があり、そのひとつを占める。

 ホールより高い位置にレジとキッチンがあって、階段を何段か上がって注文をする。バーガー8種類、サンドウィッチ6種類――さっきから売店兼と繰り返しているが、出て来るモノについては売店ノリの、出来合いをレンジでチン……ではなく、手間暇かけて本気で作っているので誤解無き様。ナチョス、サルサ、アヴォカドなど南方系の味が多い。某所ではアヴォカドバーガーが評判らしいが、当所ではもちろん基本はチーズバーガー、レギュラー150g、\800。レギュラーサイズのバーガーはバンズを選ぶことが出来る――ノーマルなレギュラーバンズを選択。ゴマがよく効いている。裏にバター、ピク、レッドオニ、その上から甘いBBQソースがかかる。さらにコノ面子の中ではちょっと味のゆるいトマト、チーズ、パティ、サニーレタス、で下バンズ(heel)。パティはやはり粒々した感じの肉感で悪くない。いっそBBQソースがもっとピリッとくれば、パワーが増してもっと美味しくなるかも知れない。やや決定打が無い気もするが、フレンチフライも付いてこのボリュームと内容ならコストパフォーマンスに優れていると言ってよいだろう。

 冒頭の話の続きではないが、"某"京ドームと同様な娯楽施設かつ閉鎖空間でありながら全くボッタクリに陥っていない辺り、高く評価すべきだと思う。但し「もちろんカフェのみのご利用も大歓迎です」ということで、チケット買って入場するエリア"外"にあるワケだが……ってコッチだってそうか……!というコトなのでお気軽にご利用を――

2005.5.8 Y.M

Le cafe BERTHOLLET

[表参道]
# 68

 ル・カフェ・ベルトレ(注:語尾の"T"は発音しません)――某誌編集・N氏ご紹介の店。かつて『料理の鉄人』で勇名を馳せたフレンチシェフ・柳舘功のカフェ/レストラン/バー。青山通りに面したビルの奥のまた奥の半地下。昼なお暗い店内、両端が合わせ鏡のソファ席は、背の後ろからホリゾントライトが赤い光を壁に投げ掛け、この光の陰影が織り成す"空気感"が絶妙な空間演出になっている。白タイルのビル壁面をそのままガラスで囲ったテラス席は、見上げると真上は"空"。BGMは案外とひねりなく、ひるどき洋楽ポップス有線。

 コノ店の注目メニューはフォアグラバーガー トリュフソース\2,650――2枚のフォアグラの間に牛肉のパティを挟んで……って違う!(ソレじゃまるっきり友人G.Iの受け売り)冒頭のN氏も、そして当サイトの常連O氏も食したソノ味、さて如何なる哉――とはゆかない。まず基本から押さえるのが当"隧"道の流儀と心得よ!(ナンチャッテ)。ランチメニュー、チーズバーガー“スペシャル”\1,300、コーヒーor紅茶付。ケシの実いっぱいのフランスパンバンズ、皮はパリパリと砕けるが身は飽くまでぷるんと、野菜の水分も吸い込んでパンプディングかのようにしっとりウェット。裏バター、オニ、トマ、またオニ(多分)、チー、パティ、レタ、バンズ。白いオニオンは一見すると"生"風だが、軽く火を通してある――かな……多分。薄く伸びた白いチーズが時おり良いタイミングで顔を覗かせる。パティは中に刻んだタマネギが入っているので、ま、ハンバーグですな。中心が最も分厚く、コロンとしている。しかしミンチでなく、肉を何遍も叩いてはまた叩き、軟らかくしていったもののようで、ココなどとよく似た食感。このパティの塩味がバーガー全体の味になっている。マスタード、ケチャ、タルタルが別途器に入って置かれるが、例によって肉の静かな旨味だけを何も付けずに味わう。フランスパンバンズ表面の"カサッ"とドライな感じが全体を強く貫き、カッサリした印象のバーガーに。しかしガサガサが過ぎて消化不良を起こすこともなく、適当。量は見た目以上。衣の付いたフレンチフライもどっさり盛られ、こちらは食べ切れず。てっぺんに串が刺さっているのだが、これだけではバランスは保てず、食事半ばで崩壊。後半はナイフ・フォークで食べたが、やっぱり感じ出ないよネェ〜。

 "カフェ"と冠しているコトでもあり、しかし場所がそれなりであることを考えれば、そんなにも高くない値段で柳舘氏直系の味(多分)が楽しめる、リーズナブルなお店。とにかく赤い壁の前の白いソファへ。

2005.6.6 Y.M

Sign daikanyama

[代官山]
# 73

 代官山の駅ビルに入っているカフェ――と言って良いかどうか、ちょっと迷っていたのだが、住所に「代官山駅ビル1F」とあったので躊躇無く駅ビルと――。「すべては「待ち合わせ」時間を快適なものにするために」のコンセプトの下、コノ駅ではこんなイイ感じのカフェが待ち合わせ場所担当を受け持っているワケ。ホームは真下、時おりガッタン……ッンガッタンガッ……と、リズムの悪い東急東横線の通過音が鳴る。

 とにかく場所が良い。丸テーブルを5席ほど並べたテラスは遠目にもよく目立つ。何とはなしに店に目が行って、そのまま吸い寄せられるようにふら〜っと入ってくる客の様子が手に取るようによく分かる。店内はほぼ外光のみに頼った照明加減。天井と壁いっぱいにシミュレーションゲームでおなじみの「ヘックス」が描かれている。サファリがテーマか、「グルービジョンズ」という人気アート集団の手によるらしいと。DJブースがあり、その隣は壁一面洋雑誌のマガジンラックに。ホールは若い男性数名、無口でクールな接客に終始。BGM――高音過多のクラブ系がシャリシャリと大きく鳴っていて、否応ない感じ。モトはTransit general office Inc. という会社(有限)、ケータリングからホテル事業からデザイン系のお仕事から、そしてなんと!レコーディングスタジオ(規模の大小は定かでないが)まで構える。店は他に外苑前にも。

 ランチメニュー、クラシックビーフ アボカドバーガー\1,180。ブラス\200で、細〜くて飲みにく〜い黒いストローが刺さったグレープフルーツジュースを。付け合せは刻んだナッツとドレッシングのかかったサラダ、フレンチフライ。
 グラハム系バンズ。てっぺんから串一本。表面ケシの実の粒々がい〜っぱい。モロモロ系と言うか、もともとウェットな感じなので、中身の水分を含むと肉まんの皮みたいな食感になり、つまり水気にもそれなりに持ち堪え、かつそれなりな食感を呈すバンズ――コレは新食感かつ実用的。中身はフリルレタス、アボカド、マヨ、レッドオニオン、真紅のトマ、ケチャ、パティ。レッドオニオン&トマトは甘味があり、アボカドも脂の乗った良いお味……なんだけど、つるりと滑ってバーガーの軸線からイの一番にスピンアウトしてしまった。仕方ないのでまずはみ出たアボカドを中心につるっと食べ、次に残りの味を楽しむことに……止む無し。マヨ&ケチャでしっかり味も付いていたので、アボカド無き後も最後の一口まで物足りなさを感じるコトはなかった。パティはハンバーグ。お皿のデコレートから店内のデザインからBGMから、見た目重視なコンセプトが全般に貫かれているのはよくわかる。やっぱりアボカドバーガーはバーガーパックが不可欠だねぇ。

 その他メニューは48時間仕込みカレーを筆頭に所謂カフェ飯やスイーツが充実。但し隣のオーダー聞いてたら、品切れが多くってちょっと気になった。立地上なにしろお客さんは数来るだろうから、その辺の材料確保も大変だろう。去年'04年の4月オープン。

2005.6.28 Y.M

cafe fifty-fifty

[吉祥寺]
# 90

 ところは吉祥寺。「ダイヤ街」という、いつ聞いても・何度聞いても変な響きのアーケード街にて――。とあるビルの"いかにも"吉祥寺"らしい"細い階段を上がった2F。明るいクリーム系の色調をメインにした、ポップながら落ち着きある、ゆったりしたカフェ。タテ長な店内、打ちっ放しの床の上にはすっきりモダンなダイニングチェアと明るい木目のテーブル。基本的にどの席も机を引っ付けて4人掛け仕様になってい(たように記憶す)るのが面白いところ。「どうぞお一人様でも遠慮なく、ゆったりとお使い下さい」ってトコでしょうか。確かに、如何に流行りのオシャレなカフェと言えども、隣との間隔狭く、窮々と押し込められてブロイラー状態……な店というのもこのご時世少なくないので(もちろん人気スポット吉祥寺然り)、その点"距離"や"居心地"に対する気遣いが非常によく図られているように窺がえて、好ましく思った。落ち着いたライティング。白く塗ったコンクリ壁に上向きにバウンスする壁の照明(コーブ照明とも違う模様)、天井からはレフランプが所々強い光を落とす席と、暗目のペンダントが垂れ下がる席とが半々。窓はあるがココも外はアーケードなので、煌々と差し込む光は陽光ではなく、蛍光灯。適度な混み様/空き様で、独り静かに勉強するのにも向きなゆったりした空間

 さて着席とほぼ同時にバングルスの「エジプシャン」が始まる。頭上にBOZEのスピーカーのある席を選んだので、タンバリンの音がシャリシャリとまぁよく響いて……。コノ曲と言うかバングルス、当時はえらく嫌いだった。しかし後年コノ曲を手がけたエンジニア、キース・コーエン氏に出会って以来、手のひらを返すように好きになってしまった、という「私的曰く付き」な一曲。ガールズロックバンドの非力な音色が彼のミックスによってパワフル……に成るべく、最大限の努力を試みたであろう、そんな痕跡の窺がえる曲――というワケでBGMはバングルスのベスト。スタッフも女の子多数、客層も女の子中心。そのちょっと女の子なテイストをバングルスがまた見事に表現しているように思った。己を知ってこそ出来る選曲の妙!

 チェダー&モッツァレラバーガーラージ\820、レギュラーなら\550。コノ辺りの設定も"女の子対応"か。付け合わせナシ。マスタードマヨネーズと刻んだピクルスが別に器に。「50/50」の印の入ったグラハムバンズ(いまだにアノ焼印の入れ方が解らない)。中身はソテードオニ、薄いトマ、その下に約束のチー×2種、パティ、レタスが敷かれて、下バンズには粒マスタードが。さて食べると何処からともなく現われる、甘〜いフルーティーな味と食感……コレ実はタマネギなのである。いわゆる「キャラメル色になるまで」じーっくりと炒めたタマネギの放つコノ甘味は、いまだかつてどのバーガーでも経験しなかった新種の味覚。グラハムバンズのちょっと野暮ったい食感に加わるパティ=ハンバーグのナツメグ味は正直好きではないが、しかし淡いモッツァレラの旨味タマネギの甘味とが立ち過ぎず・勝ち過ぎずの良いアクセントになっていて、実にイイ余韻を残す。どこを切ってもポップスウィートなバーガー。

 書き忘れたが、店内早くもハロウィンの飾り付けがされていて、メニューにもカボチャを使ったバーガー/スイーツが登場!この辺も吉祥寺らしい。帰りがけにカボチャを使ったクッキーを1枚もらった――やった!つくづく思うに"いかにもコノ街らしい"お店である。吉祥寺は若者の街だが、同じ若い街=渋谷のようにはスレ切っていなくて、何処か若者らしい健全さ純心さを――要は若干の地方色と、そしてイモっぽさを――持った、そんな街なのである。コノ店にはそんな吉祥寺の若い空気と佇まいを凝縮させたようなところがあるように思えた。老舗カフェの多い場所柄、生き残ること自体、我々の想像をはるかに超える難しさがあるかも知れないが、しかしゆったりした空間の中で、なかなかにイイ時間を送ることが出来たので余ハ満足デアル。そうそう、老舗のお歴々がカレーで売っているのに対抗してバーガーをブツケテきた辺り、バーガー支持者の一人としてエールを送るとともに、その趨勢を興味深く見守りたく……。

※2006年末閉店。カフェの街、喫茶店の街、そして何気にカレーの街……喰いこむことは難しかったですか(2007.7.7)

2005.9.24 Y.M

dining CAFE Indigo

[外苑前]
# 92

 青山はさみしい街である。賑わいが集中しているのは表参道くらいなもので、あとは通りから一歩また一歩遠のくほどに街の気分が急速に減退してゆき、やがてただの住宅街に迷い込んで、あげく殺風景な千駄ヶ谷に出たり、墓地の脇に抜けたり、車ビュンビュンの六本木通りに行き当たったりするのである。青山は"街"と言うより"一帯"と呼ぶ方が正確だろう。太い幹線道や広大な敷地を有する墓地・公園・大学などによって土地が分断されて、ひどくまとまりがなくなってしまっている。元々がそれほど人の集まる場所ではなかったのかも知れない。その広大な"空き地"に造られた神社競技場霊園は、よく考えるとこれらすべてイベント事(催事)そのものである。そんなイベント施設の周辺に常時露店が軒を並べている――という程度の賑わいが青山の本当のところなのかも知れない。いやだからこそ、一本入った所にひっそりと隠れ家を構えるに足る条件が揃ってもいるのだろうけれど。とにかく――賑わいの上からきちんと蓋をしていなかったがために、どんなに飲んでも騒いでも熱くなってもすぐに冷めてしまう――学生の当時から、私は青山のそんなところがどうも好きになれなかった。

 休日の青山はことさらに人影少なく、外苑前で降りて小雨振る青山通りを急ぎ足に歩きながら、通りに面した店の構えをあらためて眺めると……本当に青山なのか?と疑いたくなるような泡沫な商売の店が多く……って失礼ながら。いやいや、青山の商売のメインはオモテでなく、やはりウラでしょ……と言ってもこの辺、裏手にはすぐ青山野球場があって奥行きなし。裏に入り込もうにも入り込む所がない。あわや腐蝕寸前の寂れた街並みを横目に「こんなところにホントにソンナ店があるのか……」と疑念を深めながら前進を続けていると、伊藤忠ビルの向かい辺りでようやく生活のニオイらしきモノが感じ取れるようになってきた。適当な角で曲がると無事目標の店を発見。ちょうど雨が強くなってきたところだったので、逃げ込むように中に入る。

 「インディゴ」という店名からは何か重たい印象を受けていたのだが、扉を開けると「都会に居ながらヴァカンス気分を!」をテーマにした店内は確かに南洋のリゾート風。裏路地に面して一応テラス(と言うか手すり)が設けられていて、オープンエアに。木製の引き窓がはまっている。入口の扉も木――この辺り決して安くはないだろう。リゾート気分を演出するデッキチェアに籐の椅子。床は幅の広〜い板張り。柱には藍色と濃い水色のタイルが美しく張られ、突き当たった壁の下にはやはり藍色のロングシートに藍色のダイニングチェア。キッチンを囲む壁には淡い水色のタイル(されどゴッツイ)が施されている。無論、熱帯系観葉植物も。東南エイジアンな香りとマリーナな雰囲気の中間をゆくブレンドの加減が妙に巧い。センスバリバリの尖がったカフェと言うより、ご近所の人が気軽にコーヒーを飲みに入るようなかつての喫茶店の役割を受け継ぐ新感覚イタリアン ダイニング(←ナゼ半角……)。

 Indigoバーガー\1200「国産牛肉100%!!1日限定30食のみです」ぐるなびによると「一日限定20個!」……ハテ、どっち?驚くほどすぐに出て来た。このバーガーがこんな短時間で仕上がるのか……久々に驚いた。付け合せはツナと豆類の入った凝ったサラダに、ちょいアンチョビ風味のフレンチフライ。お供にアイスのカフェラテ\550。フカ系バンズ、表面白ゴマ。皮は非パリパリ、ウェットな食感がバーガー全体のキャラによく合っている。裏バター、ソテードオニ、久々に"ホンモノのパティ"、ベーコン、トマ、折りたたみ式レタスに見事な辛子色のマスタード、バンズ。パティは久々のホンモノここしばらく"ハンバーグ"が続いてたので、正直ホッとした。軽く振られた黒胡椒が時折ピリッと効果的。マスタードは辛さよりも酸味のアシスト。トマトから水分が適度に漏れ出し、バーガー全体に良い潤いを与えている。塩気のキツくない、バランスの良い丸い味のバーガー。BGMはジョディ・ワトリーの「ルッキン・フォー・ア・ニュー・ラヴ」、続いてロス・ロボスの「ラ・バンバ」……無難に80'sヒットチャート有線。

2005.9.29 Y.M

VILLAGE VANGUARD DINER

[阿佐ヶ谷]
# 93

 ヴィレッジヴァンガードと聞くと私の場合ジョン・コルトレーンが思い浮かぶ。

 本社は愛知県愛知郡長久手町。以下、先日掲示板に書き込み頂いたエケコ様の言葉を(勝手に)お借りすると「名古屋といえば、「味噌+カツ=味噌カツ」、「漫画+喫茶店=漫画喫茶」、「本屋+雑貨屋=ヴィレッジヴァンガード」などの未知の組み合わせで新しい市場を切り開くドッキング商法が有名だが……」という公式に例外なく則ったお店である(……らしい)。それにしても不思議な現象である。ヴィレッジヴァンガードは現在、全国に173の店舗を持っている。そういう規模の企業というのは普通、広くその名を知られているものである。特別その店に用や興味のない人でも名前だけは聞き及びがある――というレベルが全国チェーンの規模と知名度ではないかと考える。少なくともひと昔前まではそれが普通だった。ところがヴィレッジヴァンガードはそうではない。店は遍く全国に増え続けているのだが、しかしその名を誰でも知っているかと言えば……今やそんな時代である(――らしい)。イヤ正直私も、バーガー筋の情報としてその名を認知したまでであって、実際に街中でヴィレッジヴァンガードに遭遇したことは一度もないのである……

 本業は小売業(「遊べる本屋」をキーワードに、書籍、SPICE(雑貨類)、ニューメディア(CD・DVD類)を複合的に陳列して販売する小売業)。ダイナーは、東京は阿佐ヶ谷が一店目(……の筈)、吉祥寺、続いて今春下北沢店が出来て現在3店舗。中央線阿佐ヶ谷駅の北口ロータリーからビックリするくらいすぐに在る、細路地の別世界。ガレッジ風、白塗りの天井屋根。椅子は古家具屋できっとバラバラに買い集めたのだろう、チューリップチェアやらシェルチェアやらがざっくばらんに。細長い店内、奥はやや広くなり、片側の壁伝いに座り心地の良いベンチ。照明は箇所々々にレフランプのスポットが光るだけでウンと暗め←撮影泣かせ……。板張りの床はずいぶん使い古しているように見えるが、壁は最近塗ったように見えた(けど、なにぶん暗がりなんでネ……)。客層は見事なくらいに若者ぞろい。みなさん好みに一癖も二癖もある中央線沿線住人たちなんだろうか。バーガー15種。中にはテックスメックスバーガー\820やニューヨークバッファローバーガー\820といった興味を引く名前のメニューも。チーズバーガー\820。付け合せはフレンチフライと、そのヨコにややションボリとピクルス×2。お相手は冷たいメープルティー\470。

 ツヤのあるバンズは表面何もナシ。皮の張りが強く、言うなればブリオッシュに近いか。中はよく伸びるゴーダチー、その下にピクルス――この味は残る。パティが来て、オニ、タルタルソー、トマ、たんまりフリルレタ、フレンチマスタード、下バン。ソースはマヨネーズでなくてタルタル。タルタル自体、そもそも私はそれほど好きなソースではないのだが、ココのものは例の鼻につく"ひしゃげたニオイ"がなくて好印象。トマトがやや酸っぱめで異次元だったが、パティはコリッとした噛み応えキュッと締まった肉質でイイ仕事。控え目ながらも肉の主張をしっかりと忘れておらず、この地味な安定感は堪らない。フリルレタスは通常のレタスに比べ弾力に欠けるか。焼いていないバンズのしなっとした表皮の食感と重なると、跳躍する力にやや不足を覚えるが、その分「内」にイイ旨味を溜め込んでいるであろうバーガー。

 BGMはジョニー・B・グッドみたいなロックンロールから、ニッキー・ホプキンスみたいな"強いタッチの"ピアノへと。いいアルバムだったー!ついつい欲しくなった。で帰りがけ、どうしても気になるもんで、癪だったがついにスタッフに聞くと、見せてくれたCDには"B. Bumble & The Stingers"と。ふぅ〜ん……知らないなぁ、最近の人たちかな……などと見当を付けつつ帰宅後調べてみると、ナント60年代英国のグループとわかった。ほぉ、ニッキー・ホプキンスも遠からじ――ですかな?

 もひとつ重要なおまけ――
オモテの細路地から2階に上がる木の階段――ココこそコノ店で最も注目すべき空間であることに帰り際、ハタと気付いたのである。擦り減って年季の入った(ように見える)木の階段――見上げると右手にはペンキの剥げかけた板壁。この壁が2階までずっと続いていて、辿ってゆくと真上にはキッチンが在る。キッチンには階段に向いて不思議な窓が付いていて……と言いつつどんな窓だったか思い出せないのだが、とにかく変わった開き方をするのである。で、季節柄その変わった窓は開け放たれていて、中からジュージュー肉を焼く活気ある音が間近によく聴こえて来る。バーガー作りながら昇り降りするお客さんにこんにちはー!ありがとうございましたー!……なんと素敵な窓だろう!と言うワケでこの立体的な階段のスペースが、コノ店の特等席

2005.10.7 Y.M

カフェ アマティ

ルミネ2店
[新宿]
# 107

 駅の上にはルミネがある――前回の反省を踏まえ、駅から出ることなく食べに行けるお店を。と言っても1.改札は出る、2.マックロッテ、ジェイアール東日本フードビジネスのベッカーズなど"駅バーガー"は取り立てて珍しいものでもないからして、今回はソレら以外のお店でこの寒過ぎる冬場を凌ぎ切るべく……。

 と言うコトで前回に引き続き、舞台は新宿。連絡通路の縦横に張り巡らされた新宿は、よほど日常的に使い慣れている人でもない限り、目的地までの最短ルートを即座に思い描き、それに従って無駄なく・淀みなく移動する――ということが極めて難しい、複雑に複雑を重ねたような構造になっている。曲がる角ひとつ・降りる階ひとつ間違えただけで驚くほど目的地から遠ざかったり……という経験もしばしば。「どうしても行き方を間違えてしまう」「どうしてもココにすんなり辿り着けない」という"難所"を各人それぞれに持っているに違いない。私は京王百貨店への入り方で迷うことがある。

 南口のルミネも1F・2Fは新宿の縮図のような複雑さである。改札階から上がる階段が無数に設けられ、どこを上ると階上はどんな"画"で、どこを降りれば地上のどこに出るのか、理解し活用するのはかなり難しい。今回お茶したのはルミネ2の端も端、甲州街道に面して窓の開いた、角のお店。コッチの方に行ったのは初めて。白い壁、赤いソファ、こげ茶の梁、BGMはモーツァルトなどの協奏曲――典型的な珈琲屋さん。ルミネ1にもあり、そちらは更に純然たる珈琲屋さんのよう。軽食およびハンバーガーが置いてあるのはルミネ2の方。小田急にも京王にも、大久保にも池袋にもある。7Fにルミネtheよしもとがあるので、その流れで若いコ多数が押し寄せているかも……と予想していたんだが、チャラチャラしたところのない正統なカフェなので、利用者の平均年齢は比較的高めで推移

 10数種類のランチメニューの中、ハンバーガーセット\1,050の写真だけが一段大きい扱い。押していること間違いなし(本来「推す」だったんじゃないのかな)。更にはエビピラフ、ジャンバラヤなどの写真にもハンバーグが写っている――自信のパテというトコロですな。ドリンクはアマティブレンド。

 視覚重視、見た目に楽しい創意工夫のデイッシュアップ。表面何も飾らないバンズは「喫茶店ならでは」という感じのオーソドックスなドライな食感で好印象。裏バター、厚みのあるソテードオニ、きれいに切ったトマ、パティ、下バンにもバター。付け合わせでフレンチフライ、その横にサニーレタスとタテに切ったガーキンスとがあるのだけれど、なにせこんな見た目のバーガーなので、どこまでが付け合わせで、どこまでが挟み込むべきものなのか、今ひとつ判然としない。一考の末、レタスだけを適量ずつ何度かに分けて挟むことに。オニオンは火を通している割りに気持〜ち硬く、気持〜ち食感的な邪魔を覚えた。トマトは美味しいが、でもソッポ向いている。パティはハンバーグ(つなぎアリ)、気持〜ちベチャつき気味なものの、マイルドな塩加減が抜群。信頼できるバンズの食感と合わさって、なかなか美味しい。サニーレタスは見栄えはするんだけど、ザラついた表面の感じがパサパサしたドライな食感につながる上、少しニガイところがあるので、あまりハンバーガーに向いているとは思えない――とは最近つくづく思うこと。ココのバーガーも気持〜ちシャキッ!としたところが欲しく思えたので、平凡でも月並みでも普通の白いレタスを使った方が絶対に美味しいと思う。私如きが言うのも恐縮至極なのだが、工夫次第でもっと美味しくなるだろうバーガーのように感じた。しかし決して悪い印象は持たなかった。お店の雰囲気も多分に影響しているのだと思う。

2006.1.9 Y.M

CATOOYA

[国分寺]
# 122

 よく雨の降る夜だった。冷たい湿気を帯びた息苦しい空気の中、JR中央線を国分寺駅で降りて北口に出た。徒歩2分という地図に従い飲食店街の一角に吸い込まれてみると、そこはパブにスナック、さらには黒いロングコートに身を包んだ所謂ポン引き諸兄が道を固める小歓楽街だったのである。意思に反してこんな通りに入り込んでしまったことにまず戸惑い、かつ駅歩2分の店がまるで見つからない状況に焦りを覚えながら、しかし気付けば早くもこの界隈をざっとひと回りしてしまったところだった。成果ナシ……降り止まぬ雨を避けるため、とりあえず目印にしていたコンビニの軒下に駆け込んで、夜の街をあらためて見渡してみると、粗方の店がとうにシャッターを降ろしている――これでは仮に店が見つかったとしても、きっとやっていないだろう……と半ば心の中で帰り支度を始めながら、それでももう一度地図を出して見てみると、現在地のすぐ傍に一本の筋があって、その中ほどに店の所在地を示すマークがされているのである。はて、こんな道さっきあったかな……気付かなかったことを不思議に思いつつ、これがラストチャンスとその暗い路に分け入ってみると……あたっー!ステンレス製の扉の向こうからおめでたいディスコビートが聴こえてきたときには内心ホッとしたものだ。明るく健康的なお店のイメージからは到底想像できない、飲み屋街に奥まる細路地裏のマンション1階。

 入ると奥にバーカウンター、手前はイマドキのカフェラウンジ風にダイニングテーブルとソファがくつろいで配置されている……これだけ長いことコノ企画をやっていながら、いまだにひと目見て「このインテリアは○○風」と言えないのが情けないが、しかしシンプルで機能的なこのモダンな家具のテイストは、見る人が見れば北欧の誰々の流れを汲んでいるとか、○○の何年ごろの作品を意識しているとかどうとか、きっと面白い話が止め処なく出てきて興味の尽きぬこととは思うのであるが、しかし今回はページの都合上、それらについて触れるだけの余裕がないのが誠に残念である。

 1バーガー1枚、大きなクリップで止められたカード式のバーガーメニューが手渡される。このメニューのイラストもなかなかだ……嗚呼!アフロヘアのこの上なくよく似合うこのイラストのタッチ――コレを見て私にコレのオリジナルはどこの誰と、即座に答えられるだけの知識があったなら……!!きっと然るべき人を連れて来て語らせれば、この画風を生み出したイラストレーターにまつわるエピソードやデザイン史的位置付けなどについて淀みなく説いて聞かせて、大いに盛り上がるだろうことは疑いないのだが、先を急ぐため、残念ながらそれらはまた別の機会に譲らざるを得ない。

 ベーコンチーズバーガーレギュラーサイズ\980、お相手にハウスワインの赤を。バンズはやわらかいホワイトと固いグラハムからホワイトを選択。キィニョンさんが作る、ややドライでライトな扁平バンズは表面白ゴマ、裏にバター。以下ピク×3、グリーンリーフ、熟れたトマ、生オニ、ベー、チー、パティ、下バン。野菜は最初は外に。よく焼けた皮がシャリシャリと砕けるバンズは、実にしっかりとした立派な骨格を有していて、これならどんなに重たい具材を積んでも簡単には壊れそうにない抜群の安定感。このバンズのシャリと甘味がリードする中、生オニオンもシャリシャリとした感触を歯に伝え、フルーティな甘さのピクルスがよく効いている。パン粉・玉ねぎを混ぜたパティ――これはモスの匠味を凌ぐなめらかさである。相当にキメ細かい。そしていつまでも温かい。そして確かに塩味。中ではベーコンが地味な存在だった。細やかなパティの食感が印象的なバーガー。BGM――サンプリング多用のクラブ系がときに悩ましく、ときに物憂く。

 このバーガーの最たる特徴である、がっしりと安定感のあるバンズを提供するキィニョンさんは、'02年に南口にオープンして以来、地元の熱烈な支持を得る名パン店である。そのアーティスティックな店構えといい、険しくも華々しきパン職人人生を歩むシェフが生み出す傑作パンの数々といい、取り上げればそれこそ町のパン屋の一大繁盛記として、読み応えのあるストーリーが描けることは火を見るよりも明らかなのだが、しかしそれはこの企画とはまた別のコンテンツとして上げるべき記事であって、割愛しなければならないのは甚だ残念である。ちなみに今回繰り返し登場するコノくだりは、国分寺への移動中に読んでいた筒井康隆の『富豪刑事』に繰り返し現われる意味の無い「断り」を真似たもので、読んでいてあまりにも無意味だったものだから、つい私にまで伝染ってしまった次第。>筒井センセイ、解毒剤を下さい!

2006.4.15 Y.M

GORO's DINER

[外苑前]
# 123

 これほどまでの実力がありながら、どうして常にこの程度の客の入りしかないのだろう。立地の為せる業なのか、夜はいつ行っても空いている――。


●キラー通り
 外苑西通り、その一部に「キラー通り」という異名が付いている。なぜその名が付いたか、意外にもオフィシャルな見解というものが見つからず、名付けたのはデザイナーのコシノジュンコで、しかし命名の真意は不明……という、そんなスッキリしない情報しか得ることが出来なかった。

 いつも何やら不思議な活気を感じる通りである。広過ぎる青山通りと比べ、道幅が自然に感じられるというのが一番の要因かも知れない。車通りもそこそこ多いので、絶えず何かが肩口近くで動いている感じがして、それが商店街的な賑わいに置き換わって認識されるという、そんな理屈だろうか。

 通りからさらに静かな脇道に折れると、その中ほどに構える本当にちょっとしたお店がココ。席数にして10ほど、それもウンと引っ付けて並べた10席。所狭い店内からは、無用な装飾を極力排した、ある種の"機能美"のようなものが感じられる……やも知れない。自室に籠もっているかのようなトイレが秀逸


●FUNGO

 平日は夫婦2人に若きパティシェ"タカちゃん"、土日は利発そうなお子さん2人も加勢(イヤ別におべっか使っているワケでなく、事実をお伝えしている)。黒板の文字はマスターの妹サン書。マスターは三宿のFUNGOで店長を務めていた(ちなみに駒沢大学AS CLASSICS DINERのマスターは、GORO'Sマスターの次の次のFUNGO店長)。なのでだろう、Sandwich & Burgerと、常にサンドイッチが先にくる。

 FUNGOのメニューと比べてみると、なるほど共通点多々。しかしこの北青山にあって、三宿の古巣の値段よりも常にちょっとずつ安い価格設定にしているというのは実に涙ぐましい心掛けで、何だかもうそれだけで応援したくなってしまう。プレスリー辺りのロックンロールが流れる中、一曲だけ8分の6拍子のイイ感じのバラードが流れたんだよネ……「SLEEPWALK」だと思うんだが。

 FUNGOは海を思わせる爽やかな青がトレードカラーになっているが、ココは強いて挙げればなどの暖色系か。ロゴデザインに統一性が無いのが難だが、オレンジのチェックのテーブルクロスなど(現在黄色)、全体にどこか憎めない可愛らしさがあって、やはり町の食堂的な、打ち解けた感じで接するのが正しいアットホームなお店。


●峰屋の天然酵母バンズ

 数量限定、トッピングが選べるキラーバーガー\600など帰宅した今、モーレツに惹かれているのだが、しかしいちげんさん向きなメニューではない。毎度のチーズバーガー\1,200、フレンチフライ付き。

 新宿峰屋の天然酵母バンズは裏は軽く焼いてあるが、ふっかりやわらか実にソフト。表面白ゴマ。中はチーズが黄色の2種――レッドチェダーとモントレージャックか。パティ、グリルドオニ、赤いトマ、白いレタ、ホームメイドタルタルソース、下バン(あるいはバターが塗ってあったかも)。

 皿が来た瞬間から強い肉の香りがフンプンと鼻孔を刺激して止まない。かぶり付けばふっかりバンズのソフトな弾力、次に絶妙にとろけた――見よ、コノ艶やかな半透明の溶け具合!――チーズの舌触りとコク、トドメは塩胡椒がかなりハッキリと振られた、中のまだ薄赤いパティのタイトな旨み。これにグリルドオニオンの締まった食感とジューシーなトマトの酸味が加わり、さらにレタスが小気味の好いリズムをハイハットシンバルのように常にどこかで刻んでいて、締めくくりは卵を使っていないため、特有の嫌なクサミの一切無い自家製タルタルソースが、味わい深いザラッとした味で全体を下支えしている――という構成。

 合間に啜るホットのカフェラテ\500がとんでもなく美味しくて――そう、ココのカフェラテはCARIMALIのエスプレッソマシーンで本気で入れてくるので、不意を突かれたように美味しい(普通もうちょっと出来合いのモンじゃないですか)。紅茶はポット――こんなにカフェラテと相性の良いバーガーも久しぶりだった。ポテトもがっちりキツ目の塩味が効かしてあり、この辺の味の緩急は見事。


●スパイスの使い手

 塩胡椒がしっかりかかってパンチを効かせてあるが、全体としては至極あっさりしているという、その点では蜂の巣に一脈通ずるものがある。これだけ胡椒が効いているにも関わらず、不思議と味が足りなく感じられもしたのだが、自家製ソースがまだ他に数種あると言うし、肉はじめ素材がなにしろ抜群に美味しいので、実に久々の☆。

 なるほどつまり、FUNGOも適量さえ間違えなければ美味しいバーガーなのである……ということがコノ店をもってよく解った。しかしその辺のことをきっちり見抜いている辺り、ココのお店のマスターのバランス感覚に狂いナシ!ということで、是非又ふらっと寄らせてもらいます……と言っていたら、我が眼にも狂いナシ!その後何度も通ったが、確かに他のバーガーも唸る逸品揃いだった。


●マニアックな店

 米南部料理"ガンボスープ"を使ったガンボバーガー\1,300は(ガンボとはオクラのこと)スパイス使いがさらに細やか且つ大胆で、同じく香辛料がキュッ!と刺激的なサルサバーガー\1,200と並び生ビールとの相性は最強!!BBQソースを使ったゴローズバーガー\900といい、ソースをメインに押し立てながらもバーガー全体のバランスコントロールが絶妙に図られているため、単なる力押しに終わらない、均整のとれた細やかな味覚を堪能できる。

 若きパティシェ"タカちゃん"の作るキラープリン\200、バナナチーズケーキ\350などは香りの使い方に非凡なものがあり、オーブンなど設備の十分でない中ながら、一般的なダイナーとは一線を画す秀逸なデザートが登場する。フードにせよドリンクにせよ諸事半端無く、その小ささと注目度の低さを考え合わせると、ある種マニアックな店と呼んでも過言ではないだろう。"通"こそ足を向けるべき店

# 057 FUNGO [三宿]
# 136 AS CLASSICS DINER [駒沢大学] ☆
# バンズ― 峰屋 [東新宿] ◆ vol.3
# ベストバーガーショップ'06

― shop data ―
所在地:東京都渋谷区神宮前3-41-2 岡本ビル1F
東京メトロ銀座線 外苑前駅歩5分 地図
TEL:03-3403-9033
URL:http://gorosdiner.com/
オープン:2005年4月
* 営業時間 *
月〜土曜日11:30〜22:00(21:30LO)
ランチ11:30〜16:00(月〜金のみ)
日・祝日12:00〜18:00(17:00LO)
定休日不定休(要確認)

2006.4.17 Y.M

BIG MAMOU

[池尻大橋]
# 126

 この辺りに昼間来るのは初めてだ。誰かの運転するクルマの助手席から眺めることが大概で、一度だけ何かの勢いで渋谷から夜に流れ歩いてきたことがあったが、そのときの印象はとにかく暗く影の差したコンクリート、コンクリート……。国道246号と山手通りが交差し、その上をさらに首都高3号線が渡って行くココ大橋は、コレぞまさしく交通の要衝。何より要衝であるための機能のみを最大限に優先させたような場所で、もちろん人もたくさん住んではいるが、とてもじゃなし住宅街のくつろいだ空気など微塵も伝わってはこない。と言うか、幹線道のパワーに気圧されているような恰好だろうか。山手通り沿いもコンクリートの立方体が表情無く建ち並ぶ風で、妙に四角い印象を受ける。さてコノ要衝にさらにさらに、首都高速道路株式会社は大橋ジャンクション(仮称)を追加建設中!騒音に排気ガスにマンションの資産価値等々……近隣住民たちの胸中や如何ばかり……

 そんなことでどうにも一抹の寂しさを感じる場所なので、せめて耳元だけでも賑やかにとジョージ・ハリスンを聴きながら目黒川沿いを歩く(『33 1/3』)。そう言えばこの辺、かつてのポリドールの本社を始めレコーディングスタジオなどが点々と多いのだ。山手通りに出たら中目黒方面に方向を変えてさらに前進。店は田園都市線の池尻大橋と東横線の中目黒の中ほどに位置するのだが、最寄の菅刈小学校バス停付近から中目方面を見ても駅と判るものははっきりとは見えず、片や大橋の立体交差は菅刈陸橋の延長線上にやはりババーンと架かって、慎むところを知らない。例によって一本入った所に引っ込んで在る店で、すぐ先にはモダンなパティシェリーがあり、すぐ近くにはブランジェリーありイタリアンありバーもあったりで、中目黒からの流れなのか、所謂隠れ家が思わぬ所に潜む、なかなかに予測不能な土地柄。

 見るからに天井の低いマンション1Fに縮こまるようにして在る。年季の入った感じの石材の床にペールグリーンに塗られたガラス戸、扇形に模様の付いたフランス壁、棚に並ぶワインボトル。これで鍋やフライパンが吊り下がっていたらビストロと呼ぶ方がふさわしい店内。でも出て来るのはバーガーにサンドイッチ。入ってすぐのフロアはこじんまりと10席。フロアの真横、少し照明を落として暗がりになった一隅にキッチン、その奥にさらにフロアが続く。この変則的な部屋の形からすると中庭でもあるのだろうか。メニューはサンドとバーガーが半々。ラタトウイユバーガー(ミスタイプではないよ)、アスパラチーズバーガー、ゴルゴンゾーラバーガー、グリエールバーガー(そう、アノ帝国の感動再びッ!?)など、おとなしそう……でも美味しそうな面々。

 チーズバーガー\850、バンズはややブカっと大き目、ツヤなしの表面に白ゴマ。外にピク、トマ、白い生オニ、タルタルソーにレタ。で、チー、パティ、下バン(例によってバターが塗られていたか)。少し底の窪んだ皿に収まっているせいだろうが、垂直方向よりも水平方向に大きい見た目。加えて言うなら何処となく皆頼りな気な印象……。キッチンの暗がりに【おすすめの味付け】を記した黒板が立て掛けてあり、半ばソレに従いつ、されどケチャップ・マスタードは使わずに口にすれば、まずはバンズのやわらか〜な、やわらか〜な感触。持つとそのままヘナヘナとしおれてしまいそうな、なしのつぶて……違った、"頼りの無さ"も覚えるのだが、頼りの無いのが良い証拠、気泡大き目、されどホテル風なスポンジ質のガチガチしたものとは異なる、ふんわりとクッションのような弾力に富んだ逸品だ(多分カリカリ焼いてないからでしょうな)。次にパティのややぷりっとした食感に行き当たる。このぷりっに加えギュッと締まった感触も併せ持つパティは、下味程度にササッと塩コショウを振っただけの味付け。何も付けずにコゲの香ばしさを噛み締めたい。

 さてココにレタスの上に乗ったタルタルソースの味が加わる……今までタルタルのひしゃげた味も、マックのマヨネーズ味のパティも好きではなくて、タルタルと聞くだけで敬遠気味だったのだが……う〜む、なるほど!コノ店のタルタルソースをいただいて初めてその役割が解ったような気がした。このソース、黒板にあるとおり肉・野菜・パンの味を一体化するつなぎの役を見事にこなす、要のソースなのだ。こう使うものなのかぁと初めて得心がいった。このタルタルを中心とする肉・野菜・バンズの絶妙なる融合の中、ピクルスの塩味がまたイイ〜ところで効いてくるんですワ〜!美味しいオニオンは後口残らず!付け合せはフレンチフライにパセリ。

 レタスも気合入れてキッチリキッチリ折り畳みました!って感じでなくて、敢えてエアを入れたかのように、どこかふわりとしている。バーガー全体としてもギッチリ・ピッチリしていずに余裕のある作り。このヘヴィでもライトでもない、絶妙な量感?というものは初めてな気がする。例えばヘヴィと言えばOUTBACKとかT.G.I. FRIDAY'Sとか、あるいはLOG KITとか。一方ライトと言えば、そうね……ハンバーガーインとかBOOGIE CAFEとか。そのどちらでもない中間の軽さがココ。多分にバンズのクッションが働いているんでしょう――これがまた実にふんわりとしてるんですな。BGMはなんだかどうしてクラブ系で、どうせならもうちょっと明るいジプシー音楽とかアコーディオンとか流したらソレっぽいのに……とか。since 1898...えっ?1998?

※2007年4月20日閉店。う〜ん……これも痛い!他では味わえない、100キロ台の超スローカーブ的、独特のバーガーでしたから(2007.7.7)

2006.5.2 Y.M

BRIDGES

[立川]
# 129

 この人たちは何処から来て何処へ行くのだろう――と言うくらい、立川の駅には人が集まり、流れていた。電車乗りたくない……と思わせるほどの奔流である。町田など言うに及ばず、八王子をも軽く凌駕している。コンコースの密度だけ見たなら新宿駅南口に匹敵すると言ってさえ過言ではない。行きも帰りも迫力に圧倒され通しだった。ところが調べると、市の人口は僅か17万4千人しかいないのである。八王子市は54万5千、町田市は40万1千、前回の草加市でも23万8千人はいる。ではこれだけの人が一体何処から、そして何処へ……?などと首を傾げるまでもなく、駅北口のルミネ・南口のグランデュオ(ともにJR東日本系)を皮切りに、伊勢丹、高島屋、パークアベニュー、シネマシティ、マルイ、ビックカメラに地元のフロム中武と、これだけ居並んでしかもどこも概ねキレイに整えられているようだし、さらに伊勢丹〜高島屋へと渡るデッキの上の中空を多摩都市モノレールが豪快な蛇行を見せながら往来し、そこだけ切取ってもワクワクするような近未来的都市景観が楽しめるのに加え、駅歩10分の圏内に広大な国営昭和記念公園が控えている――。疑う余地なく立川は相当な集客力を持った街である。

 その賑わいをひとしきり抜け切った先、つまり怒涛の集客力のその先に店は在る。例によっての外れた立地であり、そして何遍書いたか知れない通り一本入った場所なのだが、しかし素敵と言えばなかなか素敵なところで、この一画には大きな庭を擁した邸宅などもあり、駅周辺にはない落ち着いた佇まいが感じられる。店の少し先には、市の保存樹木に指定されるケヤキの巨木が道の上を傘のように高く覆って立っている。きっと夏の夕刻にはしっとりと涼やかな緑が道に陰を落として良い風情になるに違いない。そんな住宅街への入り口に店は位置している。築二十年ほどのやや古い3階建マンションの1Fテナント一角。寿司屋か中華か、建物だけ見ればそんな店こそ合いそうな構え。しかし落ち着きあるカフェという感じのコノ店の外観は、深緑のテント屋根と窓枠のの配色が、ケヤキの茂るこの通りの色によくマッチしていると思う。

 ニューヨークシティにあるカフェをイメージした店内には、夢見るようなジャズヴォーカルが涼風のように流れる。床はベージュ色のタイル、ツヤのない渋い風合いの木材で室内を囲み、こげ茶の机椅子でトーンをキュッと締めている。アチラの街の様子を収めた写真が壁一面、小さな額に入って飾られている。卓上の塩と胡椒はなんともミニチュアな容器に収まっていて、どこで見つけてきたんだろうという可愛さだが、対してトイレの巨大な扉は惚れ惚れするくらいに立派なもので、むしろこうした意外なところにこそ"アメリカン"を感じる。のべ20年アメリカに滞在して、日本のレストラン業界が組織する某団体の事務局のような仕事をしていたというマスター。米国の外食業界について明るいばかりでなく、そんな立ち位置から日米各々の事情を見つめてきた人物だけあって、このブリッジズに対し寄せる想いも熱く大きくありながら、しかしある種気負いのない、余裕のあるスタンスで臨んでおられるようで、それがコノお店の立地にも、また空気にもよく表れているように見受けられる。'05年10月オープン。

 ゴールデンステート チーズバーガー\720、ランチタイムはドリンク付セット\860。ゴールデンステートとはカリフォルニア州のこと。メニューの頭には各州のニックネームが付いている。明るいキツネ色の表面に打ち粉を振ったバンズは食パンの生地を使用。ゆえに特別強い味を有さず、甘目なものが主流な中にあって、味も見た目も珍しいバンズだ。ざらっとした食感はバーガーのソレと言うよりサブサンドの感じに近いか。裏バター、マヨ、分厚く切ったトマ、燃え上がる炎のようなレタ、平たいパティ、ソテードオニ、特製ソースにマスタード、下バン。マヨネーズとトマトの合い方は割りと想像のできるソレ。ソースとマスタードも分かりやすく交ざり合い、明快な味を構成している。挽き方程好いパティはジャリジャリし過ぎず、まろやか過ぎず、過剰に肉過ぎず、されど付かず離れずの巧みなつなぎ具合。割りと単純に挟み込んだレタスとともに、ハンバーガーが飽くまでファストフード=手軽な日常食であることをあらためて実感させてくれる。このバーガー最大のポイントはソテードオニオン。しっかりした歯応えが残っていて、上記具材の合間を縫って常に安定した心地好いアクセントを効かせてくる。全体に大仰でなく過剰でなく、しかし矮小でもなく、至極当然の要件をさらりとこなしている感で、ソツのない味。自然体。ディナーのバーガーと言うより朝食か昼食にいただきたい、ライトで健康的なバーガー。シンプルな白いプレートに載ってくるのもそんな意図からか。そう思うとアチラの朝食風にフレッシュなオレンジジュースやミルクとともにいただくのがヘルシーで良いかな。このバンズならサンドイッチも美味しそうだ。せっかく居心地良い空間なので、カフェ色を強めても良いかも知れない。ニューヨーク仕込みのブラウニーやチーズケーキにチェリーパイなど、そんなスイーツたちもコノ店にはきっと合うことだろう。

 UNCHAIN FARMでも触れたように「うまいバーガーを食べたいから……ならば自分で始めちゃおう!」というのが、そのとおりに実現する世の中になったという、ここ3、4年のバーガー情勢の変化を何より興味深く感じる昨今。此処立川でも、これまで日米両外食業界の架け橋で在り続けたマスターが、自ら厨房に立って、己が掲げる理想のバーガー像を目指し、日夜腕を奮っている――。百人から百通りのバーガーが生まれ出る、いま密かにそんな時代がやって来つつあるのだ。本来ならここでフレーッ!フレーッ!と熱いエールを送って幕……というところなのであるが、しかし終幕直前、不意なことから新たな用事がふたたびこの立川に降って湧いたのである。行かねばなるまい……

2006.5.8 Y.M