はっきりしたテーマが一本あるとやはり強いやネ。「ノンノンの国の健康パンは ●ノンオイル・ノンバター ●保存料不使用の厳選素材 ●低塩分」「ノンノンの国のパンはこんな方におすすめ ●ダイエットに役立てたい ●血液をサラサラにしたい ●高脂血症・糖尿病の予防に」……言われてみれば確かに気になるキーワードをふんだんに配した、秀逸なコピー。事実私もそれイイね、イイね……とすっかりその気に。だって、食べ続けると血液がサラサラになるパンがもしあったとしたら……やっぱりイイよネェ〜!一見童話チックなお店の名前には実は駄洒落が入っているワケだが、しかし誓ってオイルとバターは入っていないという健康パンショップ。おいしくヘルシーな家庭料理を提唱する健康料理創作家・茨木くみ子先生は港区三田にキッチンスタジオを構え、健康パンを通販し、そして自由が丘にこのキッチンカーの直販店を出している……堅固だ。
南口の改札を出て……おーっと!探す楽しみ無くすぐ視界に飛び込んでくる赤いキッチンカー。'03年6月オープンというから今年で3年目。こんなトコに在ったっけ……我が心の白地図にまた色が着いた。すぐそこがお馴染みの緑道なので、座る場所には事欠かない。ただこれからの時期(雨期)は売る側も買う側もややツライでしょうが。ボディにメニューと効能書きが大書――確かにサイトでも良いこと言ってんだよネ……「少しの小麦をイーストフードで無理矢理膨らませ、嘘の香りで誤魔化し、添加物の力で作り上げたパン・・・それを美味しいと思う日本人の味覚を不安に思う毎日です」……大量消費・冷凍食品な味覚にすっかり慣らされた我々生半な現代人にとっては、まさに耳の痛いお言葉。
お値段お手頃、チーズバーガー\300、トッピングトマトは+\50。チリソースも+\50。パックには丸いほっぺのノンノンキャラ。打ち粉たっぷり、北海道の地粉を使用したバンズはもちろん裏ノンバター、ノンマヨネーズ。イーストフードなど使わないと謳うだけあり皮硬め、ふわふわせずしっかりした作りで、コレが小麦本来の味なのか、噛むと砂糖とは別種の淡い甘味がしみ出してくる。白いチー、マス、ケチャ、ピク、白いオニ、パティ、その下にトマ、下バン。ご想像のとおり、至極あーっさりした味である。低カロリー、低塩分――こうなるとパティの味よりバンズの甘味、ケチャップよりもマスタードがよく効いてくる。ピクルスは水分少なめ、はっきりした噛み応えとスウィートな味を持ち、印象的。噛み応えと言えば、大きく刻んだ白いタマネギもこれまた甘くて美味しい。白いチーズはパティの熱に溶けてもっちりした食感。家庭で作るハンバーグと同じレシピのパティも、されどナツメグをブンブン効かせているワケでなし、軽い風味で食べやすく出来ている。細かーい胡椒がササと振られているようなのだけど、素材それぞれの特長を大きく変えてしまうものではない。香辛料の過激な用い方が無い反面、締めのお塩のキュッ!も無いので、ふわふわ〜っと甘く軽〜く漂い流れてしまいそうな辺りが少し頼りないけれど、お店のイメージを裏切らないナチュラル&ヘルシーなバーガー。なるほど……自由が丘の食の志向ってある種こういう感じかも知れない。そうそ、自由が丘らしく?バナナカスタードバーガーとあんこカスタードバーガーの2種類のスウィートバーガーがある……って、ノンパティはバーガーじゃないんだけどサ。
まぁ大量消費・冷凍食品な味覚にすっかり慣らされた我々生半な現代人は、反動でスゴク塩っカラ〜イものを食べたい衝動に駆られるやも知れない。しかしそれじゃあまるで逆効果。飲み物も着色料&香料バリバリのコーラや何やは避けて、オーガニックなコーヒーや紅茶と合わせることが出来たら尚良しでしょう(そんな店、近くに在ったかな)。にしてもこんなヘルシーなパンを擁して、またよりによってハンバーガーなどという、ときに不健康の"権化"とも目される食べ物をわざわざ作ろうってこと自体、いきなり&思いっきり敵の首領に攻めかかってる感じで、考え様によっては"スゴイ"です。だってわざわざバーガーに限らなくたって、的を広めに「サンドイッチのお店」としといても良かったワケじゃない?一方で「街角でハンバーガーを売る」というのは、バーガー本来のあるべき姿として、ひとつの理想形のようにも思えるので――端で見てるとなんか楽しそうなんだよネ、売る姿がサ。しかもその街角が自由が丘だなんて、まさしく絵に描いたような!――チャレンジャー精神半分/夢半分をミックスしたお店です。
2006.5.28 Y.Mカフェな雰囲気のハンバーガーショップ――と言えば、代々木公園のARMSはその代表格だろうか。この秋9月、同じくカフェな雰囲気を目指した居心地好いお店が学芸大学にオープンした。
住所は目黒区鷹番――とくれば、東横線開通以来の住宅地。商店街から一歩入り込むと、古めかしく厳めしい面持ちの家々が重たく並んでいる。新しいものなどおよそ発信しないだろうこの古い住宅街の中に、この店は在る。駅歩5分。以前はイタリアンが入っていたマンション1Fを丸々使った広い店内。30余席、座り心地の好い赤い椅子とアイボリーのテーブルの組み合わせが並び、一番奥にはソファが壁幅いっぱいに配されている。壁を飾る白黒写真はこの店のデザイナーお気に入りの、サンタモニカのホテル。西海岸の明るく心地好い空間をイメージしたインテリアデザインは、どこかリゾートな、開放的な空気を生み出している。BGMにはブラック系が実に耳障り良く鳴っていたのだが、ふと見上げるとソニーのスピーカーだった――BOZEより断然好きかも。
コノ店最大の注目――と言えば、自前で焼いているバンズ。国内にバーガーショップ数あれど「バンズを自給できている店」というのは恐らく幾つも無い筈である(つい先日の神戸屋レストランやホテルなどを除けば、佐世保のミサロッソぐらい?)。バンズはラーメンにおける麺に相当すると言ってよい(もちろん値は違いますが)。麺は製麺所が作るのに同じく、バンズはパン屋がそれを請け負っている。窯などの設備の問題、それと同じくらい手間の問題が大きいだろう。コノ店の場合、オープンキッチンの中央にオーブンが設置されている。そう大きくはないので一度に焼けるバンズの数は20くらいだろうか――多くはない。オーブンの下には引き出しが何段も付いており、中には発酵中のパン生地が入っていて、発酵の様子を見て順次オーブンに入れてゆく……という作業を時間を計りながら延々と繰り返す。ひとつ計算を間違えるとバンズを切らしてしまうことになるのだから、これは大変だろう。焼き上がったバンズはツヤ消したような皮の感じが非常に食欲をソソる色合いで、生地は若干黄色みがかっていたか。割りとあっさりとして食べやすく、重くない。なかなかツボを得た一品である。
次に特筆すべき――とくれば、メニュー。バーガー類30種、そのメニュー体系および数種のソースから選択させるところなどは、都内最高峰BROZERS'に息を呑むほどよく似ている。赤い唐辛子マークまで似ているのには流石にビックリ……。とは言え、BROZERS'そっくりのコピーバーガーが登場するワケではなく、結果的にまた違う味を目指しているようでもあり、参考にされるのは「王者の証し」と思って>BROZERS'、ここはひとつ……。ま、そんだけ注目されてるってことですな。非BROZERS'的メニューとしては、フォアグラを挟んだロッシーニバーガー\1,750やアスパラバーガー\1,100など――オックスの個性と発展はこれから。
BROZERS'でもお馴染み――とくれば、パインチーズバーガー\1,150。バーベキューorトマトソースの二択はBBQを。直径は小ぶりな部類だが、高さが半端でない。上からスキュアでひと突き。ソースの垂れ具合といい、DEMODE DINERの背高のバーガーを思い出す。ソースを一方からのみ垂らすのが技術と演出。バンズはてっぺんのみ僅かにテカり、美味しそうな白ゴマが乗る。裏はサクッとコンガリ。中は一番上からソースが存分に滴り、モッツァレラチー、軽く鉄板の上に乗せたパイン、パティ、生オニ、これでもかというくらい分厚いトマ、ふんだんに畳み込んだレタ、下バン。BBQソースは案外甘め。それほどピリ辛くない。粗く挽いたパティはZIP ZAPを思い起こさせるミディアムレアな焼き加減でむしろステーキに近い味わい。香辛料の鋭い香りがよく効いて極めて強い牛肉の余韻を残す。但しレアな焼き方ゆえ温度が低く、アッツアツを口にする(かつ手に持つ)醍醐味には欠ける。レタスの畳みは良好、贅沢この上ないトマトの厚味とともにこのバーガーの下半分を構成するのはこれら新鮮野菜。但しこちらもバーガーに挟むにしては少し冷え過ぎているうえ(パティの温度も関係するか)、水気が多いため、袋の隅にずい分と汁を溜めることになる。パティだけ見ればかなり美味しいのだが、しかし下半分=野菜との連携が今ひとつで、今だと上は上、下は下にそれぞれを味わう二重構造に近く、BBQソースがぐるっと全体に回り込むようなトータルなバーガーの味わいにまでは辿り着いていないようだ。実際これだけソースをかけていながら、多過ぎる野菜がソースの味を薄めている部分もある。野菜で背の高さを出そうとするあまり、バランスが悪くなっているのだ。出来たらチーズとパインにもひと工夫を。パティの後味はとにかく素晴らしく、いつまでも肉らしい余韻が口中に続く。その余韻を程好いところでリセットさせるかのように、よく漬かったコーニッションとらっきょが後味キュッ!
後日再訪すると、温度の低さをチーフ自身やはり問題視して、トマトを軽くグリルしたうえ、挟む順番をパティの上に持って行く改良を加えていた。パティも前回より少し強めに焼いていたか。この日はトマトソースで食べたくて、トマトに一番合うバーガーを――と普段頼まぬアボカドチーズバーガー\1,200を選ぶと、何時間とかけて鍋で煮込んだ自家製トマトソースとチーズががっちり噛み合う安定感の中(王道デス)、ソースのライトな酸味がバーガー全体に行き渡ってサラダを食べている感覚にも似た爽やかさと、しかし一方では噛み心地がしっかり程好いパティの旨味に黒胡椒のピンとした刺激がよく効いて、肉・野菜それぞれの美味しさを楽しめる面白いバランスのバーガーを食べることが出来た。アボカドの存在もさることながら、やはりトマトの工夫が奏功しているだろう。コノお店……断然トマトソースがオススメ!(以上2006.11.6追記)
気の合う仲間が集まって――居心地好い店内で気の向くままに寛いでいただけたらと、そんな店を目指してオモテ通りから入ったコノ静かな立地を選んだ。「ジワジワと浸透してゆけば」とはコックコートに袖を通すのは初めてという若きチーフの言葉だが(※今まで違うもの調理してたんです)、ぜひこの寛いだ空気をキープしながら「ハンバーガーのある暮らし」をじわじわ広めていっていただけたらと、「雰囲気」と「バーガー食普及」の両立を心より願う次第。流行るとごった返すし、難しいトコですが……。自家製バンズとステーキのように美味しいパティを武器にどんどん行きましょ!経営は……忘れてしまった。とにかく中堅外食企業が母体。
※2007年4月30日、早くも閉店。う〜ん……参りましたね。そんなに退き鉦早く鳴らされても……。
― shop data ―所在地: | 東京都目黒区鷹番3-18-7 | |
東急東横線 学芸大学駅歩5分 地図 | ||
TEL: | 03-3716-2811 | |
オープン: | 2006年9月 | |
営業時間: | 11:00〜22:00(21:30LO) | |
定休日: | 火曜日(要確認) |
今回は目くるめくトリビアの溜池――
●道順は自己暗示
まず店の場所――「わかりづらい」「迷った」などの前情報を聞かされていたのだが、ところが地図見りゃ何のこたぁない、「千代田線赤坂駅5b出口から限りなく一本道じゃない」と思った途端、近い近い!磁力に吸い寄せられるように辿り着いた。"難"と覚えるか"易"と覚えるか、要は自己暗示如何。
●いかにも麻布・赤坂・六本木
しかし賑やかな赤坂通りから一本も二本も入り込んだ場所なのは確か。
山とも丘とも呼べぬ小さな起伏の間を細い坂道が行き交う、いかにも麻布・赤坂・六本木的な狭隘な地形の中に在る。お向かいはけっこう年季入ったアパートで、これまたいかにも。こんな細道が江戸の頃からずっとココを通っていたのだろうかと古地図を調べると、今オーセンティックのある場所は、かつては筑前福岡藩五十二万余石・黒田家の中屋敷だったんですな。店の前の道を六本木通りの方に少し下ると、すぐ池があった模様。
今は地図にはローソンと出てくる(縮尺を1/1500にして見てね)。入り口の自動ドアがその名残り。えっ?この狭さでどんなローソン?……とお思いだろうが、ローソンの跡を壁で仕切って2店舗に分けたんですな。で、奥半分はバーになり、手前はコノ店になる前はジンギスカンだったと。ダクトはその名残り。
●運命の始まり
オーセンティック・佐藤マスターは、本郷の名店ファイヤーハウス(以下「FH」と略)でマネージャーをしていた。
'02年、会社勤めを辞めて飲食を始めようと思い立ち、なんとなく和カフェ系を見て回るうちに、当時FHがやっていたカフェに行き着いた(今のデリバリーの店舗が在る所)。このときFHの本店にも寄り、そこで初めて非ファストフードな、本式なハンバーガーを食べて強い衝撃を受けたのが運命の始まり。
猛烈においしいんだが「どうしておいしいのか解からなかった」と佐藤マスター。味もさることながら、スタッフのテキパキとした動き、さらにはオーラのある店の雰囲気まで、FHという店の魅力に強く惹かれて、「ここならば」と働くことを決意。このときの店長が今のARMSのマスター。UNCHAIN FARMのマスターは佐藤さんの後輩に当たる。
4年半働いて、辞めたのが昨年'06年の10月末日。オーセンティックのオープンが11月18日……ってエッ!?たった18日で始められるモノなの?もちろん並行して準備は進めていたわけだが、それにしても尋常でない短期間であることに変わりはない。佐藤マスターが惹かれたという「スタッフのテキパキとした動き」と併せて考えるに、このファイヤーハウスというハンバーガーショップ、極めてプロフェッショナルな作り手の集団なのではないかと……って、FHに一度しか行ったことのない私が言うのも何ですが。本家に同じく赤レンガのビルに入っているのは単なる偶然か。
●オーセンティック・スカ
「authentic」という言葉を辞書で引くと「真正の、本物の」と出てきて、たとえばオーセンティックバー(authentic bar)なんて使い方はよくするのだが、コノ店の場合、マスターが大好きな「オーセンティック・スカ(authentic ska)」なる音楽のジャンルが、その名の由来である。
オーセンティック・スカとは、'60年代ジャマイカで誕生したスカミュージックの中でも源流、発祥に一番近い、誕生当時の空気を最も含んだスカのことで、現在聴かれるスカよりずっとスローで、のんびりした曲調が特長。そんなマスターお気に入りの音楽に掛けつつ、「源流、発祥に最も近い」という想いは、FHへの言わばオマージュでもある(今風に言えばリスペクト?しかし軽い言葉遣いですな)。
そんなワケでジャマイカ的、「石」や「鉄」をほんのりコンセプトにした店内。スティールブルーに塗った天井に付けられたサイコロ型スピーカーからは、レゲエミュージックのルーツを辿ったドキュメンタリー『Ruffn' Tuff』(監督:石井”EC”志津男)のサントラ盤が。ちなみに天井のSoundeviceのスピーカーはFHからのお下がり。
●夜も迎撃態勢
席数20+ダークシアンのタイルを貼ったカウンターに4席。建物の形に合わせた三角形の店。元コンビニだけに窓が大きく、昼は明るい(が、窓外は件のアパート)。元々「昼間メインで」という方針があったそうだが、ひと通りお酒も揃えて夜も迎撃態勢。但し現在、店のオモテのアピールが今ひとつ少ないため、バーガー店であることもアルコールの店であることも判り難く、その点は今後の課題。近くにアメリカ大使館の宿舎(信濃松代藩・真田家十万石+陸奥中村藩・相馬家六万石の屋敷跡)などもあり、客層に占める外国人の割合は1/3に迫る。デリバリーはもう少し地歩を固めてからという堅実さ。
●ハートランドとチーズバーガー
バーガー12種。サンド5種。メニューに書かれた個性的な絵はぬぁんとPowerPointで描いたマスターの自作!コノ店の生ビールはハートランドの樽生\630。ハートランドって輸入物とばかり思っていたのだが、それは大きな誤り、れっきとした国産、キリンです。Budよりもしっかりしていて、ラガーよりも軽く飲めるからバーガーにはピッタリ!とはマスターの言い得て妙。
チーズバーガー\1,029。ふっかり大きなバンズはてっぺん白ゴマ、中はオーロラソースにチェダーチー、パティの下にレリッシュとオニオンが刻まれてマヨと絡み、トマ、レタ、マス、下バン。グズッとほぐれる柔らかなパティと柔らかなバンズの組み合わせは非常に食べやすく、スッーと入り込んでくる感じ。終始オーロラソース(=ケチャップ+マヨネーズ)が全体をリードしており、これにレリッシュとマスタードが合わさって、酸味が強調された味になる。余韻もオーロラソースの味で、全体に柔和な印象。この食感を逆手に取ったメニューがブロッコリーチーズバーガー\1,292。ソフトな噛み応えの中、モントレージャックと合わせたブロッコリーのコリッとした食感に行き当たるという興味をソソる一品。次回はコレで。付け合せはシューストリングカットのフレンチフライ。
英文解説付きの図解「Authenticなハンバーガーの上手な食べ方(How To Eat Authentic Hamburger)」もマスターのパワポ作品。定休日なしの無休とのことなのだが、FH時代の4年半、ずっと封印してきたフジロックに今年こそは!ということで、フジロック期間中はお休みの予定です。イイ感じの食べ方は、ハートランドとハンバーガーでまず一杯やって、後はラム酒をチビリチビリ……ってホント酒飲みだよ、このマスター。
→ 【二ッ目!】 Authentic [赤坂] のブロッコリーチーズバーガー
【二ッ目!】Authentic [赤坂] のベーコンチーズバーガー
所在地: | 東京都港区赤坂2-18-19 赤坂シャレー1F | |
東京メトロ千代田線 赤坂駅5a/b 出口より徒歩5分 地図 | ||
TEL: | 03-3505-8584 | |
オープン: | 2006年11月 | |
* 営業時間 * | ||
平日: | 11:00〜22:30(22:00LO) | |
ランチ: | 11:00〜16:00 | |
日曜: | 11:00〜20:00(19:30LO) | |
定休日: | 無休(要確認) |
2007.2.4 Y.M
話は*easeより続く……*easeとFIRE HOUSEを週3と週4で掛け持つバーガー界の若き鉄人(カル・リプケンとか衣笠祥雄の方ね)、守口さんのお誘いにより、この2月5日にオープンしたばかりのファイヤーハウスの新店、ファイヤーバーガーに行くことになった。
●ファイヤーハウスのディフュージョンブランド
「みなさんに食べてもらいたい」と、メニューを絞り、抑えた価格設定で提供する、本郷の名店・FIRE HOUSEのディフュージョンブランド。
ファストフード形式。注文レジは、以前は「傘屋だった」という異様にタテに長い店舗の一番奥に煌々と照り輝いて位置し、店内半ばからレジに向かって段差を埋めるための緩い勾配が人工的に形成。ビビッドな配色のタイルに彩られたレジの背後にはキッチン――FIRE HOUSE本店(以下「FH」と略。現場では「レストラン」と称)のカッチョイイのを見てしまうと「調理場」と呼ぶが近いか。簡潔で機能性のみを図ったつくり。
レジ頭上にはメニューボードが、写真でなくオールイラストで。このイラスト、オーナー直々に手がけたものであるが……コノある種キテレツなるテイスト……持ち帰ったチラシを数人に見せたところ、女子は「カワイイ〜!」とことごとく受けがよく、男子は押しなべて「……」だったのですが、その辺り狙い通りですか、>オーナー?
●ワンドリンク
バーガー類6種(含フィレオフィッシュ。FHは14種)にチキンフィレ、グリーンサラダ、デザートにはサンデー。単品売りもあるが、メニューボードには7種のコンボ(セット。フレンチフライ+ワンドリンク)が掲げられていて、バーガーコンボ\945、チーズコンボ\1,050、アップルコンボ\1,150、ダブルコンボ\1,250、ダブルチーズコンボ\1,410...といった案配。価格を抑えて……とは言っても、FHで\1,050のチーズバーガーの、フレンチフライはそのままに、ピクルスがソフトドリンクに代わってお値段同じ――という感じなので、冷静に考えて、目玉が飛び出すほどの価格破壊が進行しているわけでもない。
ドリンクはセルフでレジ横のサーバーからワンドリンク。この「セルフのワンドリンク」制は若干の戸惑いを生じさせるので、カップを手渡す際に口頭での補足説明などもう少し必要だろうか。なお……大変残念なことに禁酒令が施行されております。
●マヨネーズとマスタード
チーズコンボ\1,050。ドリンク、おしぼり、バーガー袋その他はオールセルフだが、バーガーは番号札を頼りに席まで運んで来ていただける。底の浅い紙のトレイの上に載ったチーズバーガーは、FHより気持ち小ぶりながらも、しかしクオリティダウンでなく、ただのサイズダウンに見える辺りがポイント。付け合せのフレンチフライはナチュラルカットから細身のクランチに代わり、ピクルスはナシ。
ふっかりバンズはFHよりやや重量減(10gほど)、セサミなし。中はお馴染みのマヨにチェダーチー、パティ、お馴染みのレリ+オニ、トマ、レタ、マスタード、下バン。オーナーの好みと想像されるモチッとした食感はこのバンズでも健在。若干皮が口に残り目、生地は甘目――クリームパンを想像していただけたら。
野菜の量もやや減らし、その分味の調整をしてあるとは言うが、パティとマヨネーズの"塩"が合流すれば、チーズの塩気も霞むくらいのかなり明確な塩味が形成される。パティはFHと同じものを使用。ただFHよりしっかりと焼き込んであり、まぁこの辺は好みだろうが、あまり柔らか過ぎても心許ないし、これくらいの方が肉らしい感じがして、私はタイプ(でもFHはFHで美味)。柔らかなバンズをマヨネーズ味とツンとしたマスタードの味でいただく、100%FIRE HOUSE保証のバーガー。コショウも効いてゴツッとした食べ応え。
●チーズコンボで播磨坂
でナニ?↑この見出し……??
BGMはセリーヌ・ディオンとかウィルソン・フィリップスとか90'sヒッツが、例のSoundeviceのサイコロ型スピーカーから。壁床天井、どこもコンクリ剥き出しな上、店内音を吸収するものが少ないので、ナチュラルリバーブかかります。
40席以上は並ぶだろうスペースに現在32席。傾斜部が使えないのが難。真っ白な壁はメニューが掛かるばかりで、文字通り"余白"がいっぱい。ひたすらに「遊び」の少ない空間で、バーガーショップと言うよりも社食とか学食とか、ただ空腹を満たすためだけに在る場所のように思えてくる。ここまでスッキリし過ぎちゃってるのも、どうかと……。
ホールとキッチン、店内と店外(入り口)の明るさの差も気になったかな。暗がりに置かれていることを必要以上に意識させられるんだよね、"こっち"よりも"あっち"の方が明るいというのは。弱目のハロゲン球を全般拡散したダイナー的なライティングは、コノ店の造りには馴染まない気がする。と言うか、この薄暗さに単に慣れていないだけなんだろうけど。
ハンバーガーの美味しさは「雰囲気も込みで」のものと、私は思っている。私たちは、ただ「美味しいハンバーガーが食べたい」のではなくて、お店の造りや雰囲気、空気、音楽、そしてそれらより生まれる楽しいおしゃべり……そうした要素まで全部含めてハンバーガーの美味しさ、醍醐味と認識しているわけなので――つまるところ、もう少し小物や置き物など在った方がよいかな?……というのは普及版のポリシーに反することなのかも知れませんが。……そうそう、一部禁煙席(ン?逆だったかな?)があって、好まざる人への配慮がなされています。
そんなワケですぐ側に播磨(はりま)坂のさくら並木があるので、もうちょっとしたらテイクアウェイして桜の木の下でバーガーを――なんて食べ方もいかにもマックのCM的で、なかなか乙なもんじゃないでしょうか……と、それとなくオススメしておきます。
所在地: | 東京都文京区小石川4-21-2 | |
東京メトロ丸の内線 茗荷谷駅歩5分 地図 | ||
TEL: | 03-5637-8575 | |
オープン: | 2007年2月 | |
営業時間: | 11:00〜23:00 | |
定休日: | 無休(要確認) |
2007.2.23 Y.M
清濁併せのみ、尚、清波漂わす――特集、"海にハンバーガー"
●アーバンドック ららぽーと豊洲
船橋の特産とばかり思っていたららぽーとが、最近にわかにその数を増している。昨秋'06年10月に豊洲にできたかと思えば、今春には横浜にもできた。豊洲の前には川崎にラゾーナも。
さて、ららぽーと豊洲――有楽町線ともゆりかもめとも直結していないのは如何なものか……という声に対する"申し開き"かのように、「ドックウェイ」「サンセットウォーク」なる遊歩道が、両駅および晴海通りから発して館内を突き抜け、3棟に囲まれて内庭のようになったドックへと"直結"している――エェ、全ての道は豊洲に通じてますから。
この晴海運河に向いたドックは水上バスの乗船場――豊洲には海路も通じている。その発着にあわせ、青空高く跳ね上がる跳ね橋の様子をぼーんやり眺めて過ごすのも、いかにもIHI的な楽しみ方。乗船券売場がなぜかエアストリーム。前は海、うしろは食欲・物欲‥‥さまざまな欲に囲まれて、ココは子供たちにとって格好の遊び場だろう。
●アイランド
さて、この中庭のようなスペースに離れのように突き出たアイランドと称される4つの建物がある。少し不規則な形をしていて、まぁゴルフ場のグリーンというが適当だろうか。そのうちのひとつがこのオーシャンズバーガーインである。「WIRED CAFE」「CAFE246」など直営21店を構え、いまや旭日の勢いの、あのカフェ・カンパニーが始めたバーガーショップだ。
コンセプトはハワイ――環太平洋地域と西海岸の文化が融合する島・ハワイ諸島特有の、海でつながるクロスカルチャーをベースにした、その巧みな多文化の取り混ぜぶりこそコノ店最大の見どころだろう。籐で編んだ天井に床はコンクリ打ち放し。板壁をこんな色に塗り上げて、店内中央に楕円形に構えるオープンキッチンは60'sダイナー風。溶岩石(を思わせる岩)を積み上げたテラスが外に張り出して、ドックの向こうにはるかレインボーブリッジを望むオーシャンビュー。スピーカーはJBL。BGMは特にハワイにとらわれることなく、わりと何でも。
●ハワイアンスタイル
バーガー類9種、ライスプレート8種。なぜかロコモコなし。そして世界のビールがなんと17種!しかもお手頃価格!ロングボードラガーやファイヤーロックペールエールなどハワイのビールはもちろん、台湾・ベトナム・オーストラリア・メキシコなど環太平洋的ラインナップで誘惑。
私はハワイに行ったことはないのだが、日本国内で出会ったハワイを謳うバーガーの感じを総合したものと、コノ店のバーガーとの間にはやはり共通する特徴がいくつか見られた(なので、ハワイのバーガーはきっとこんな感じなのだろう)。その特徴とは、1.平らな白いバンズを使い、2.パティはやわらか目、3.コレをオープンにして出してくる――という3点。但しクア・アイナはなぜか例外的。
●マカダミアナッツ
クラシックチーズバーガー\850、ランチは+100円でドリンクセット。付け合せにフレンチフライとあま〜いピクルス。
マカダミアナッツ入りの白いバンズの下にバサリとレタス、生オニ、トマ、チェダーチー、パティ、下バン。とってもシンプル。
セサミの代わりにバンズを飾るマカダミアナッツは確かに珍しくはあるが、特別何か機能している感じでもない。皮にムチッとウェットな張りがあって、皮だけが硬めの食感。パティにはタマネギ入り。やさしく穏やかな塩味。コゲの香ばしいニオイが食欲をソソル。水分少な目なのでケチャップ&マスタードを適宜。かなり濃い目の味のコノ自家製ケチャップはコゲの香りと相性がよく、ミョウに落ち着く方向にバーガーを向かわせる。
後口にコーヒー\400。福岡の専門店から豆を入れるスペシャルティコーヒーで、穏やかな飲み口が、海よりそよぐ潮風とベストマッチ。
●カフェとダイナー
仲間やファミリーでワイワイガヤガヤ楽しめる、フランクで、フレンドリーなお店――というこのコンセプトこそは、まさしくダイナー的精神に他ならないのだが、しかしサービスはややカフェ的。どこか一線で深く立ち入るまい、関わるまい、という"ためらい"が感じられて――と言っても"微かに"ではあるが――、我がこよなく愛するダイナーの人なつっこさが懐かしく思われた。ダイナーとはもっとネチっこいものだろう。
ついでを言えば、いかに秀逸なこのインテリアデザインをもってしても、窓外がキッチリカッチリとした大都会東京の夜景では、イマイチ空気がゆるみ切らないというか、現在地を忘れ去ることができない。まぁ窓が大きくとってあるんでネェ。もっとウソくさい方がリゾートとしては雰囲気が出るのかも知れない。ららぽーと自体建物が異様に大きいので、どこか薄ら寂しさを感じてしまうのは致し方ないことだろうか。そう考えるとむしろ人出のある休日に来た方が、そんな要らぬ思いをしなくて済むのかも――ハンバーガーは「雰囲気」重要ですから。
所在地: | 東京都江東区豊洲2-4-9 アーバンドックららぽーと豊洲1F | |
東京メトロ有楽町線・ゆりかもめ 豊洲駅歩4分 地図 | ||
TEL: | 03-6910-1292 | |
URL: | http://oceans-burger-inn.com/ | |
オープン: | 2006年10月 | |
営業時間: | 11:00〜23:00 | |
定休日: | なし(館休館日に準ずる。なので要確認) |
2007.6.18 Y.M
はじめに――今回、私のような青二才が地理や歴史の先生が如く、まるで見てきたような話を繰り広げて参りますこと、何卒ご容赦願いたく……
●六本木は"スタイル"
都内某ダイナーの店主は、「六本木のハンバーガーはスタイルだ」と語った(六本木KENTO'Sにて)――。
創業1950年、日本で最初のハンバーガーショップ――"と言われている"。当のお店の記事でこんな書き方も何ですが、「最初」と断定するについては、相当に綿密な調査と照合作業が必要と思われるので、今はあえて言い切らずにおきます。
少なくとも言えるのは、今の経営者である老川さんがその昔、浅草からHarley-Davidsonにまたがり青山界隈まで仕事に通っていた頃、ハンバーガーと言えばベース(米軍基地)へ行くか、ハンバーガーインで食べるかしかなかった――そんな時代があったということである。
サイトにもあるように、戦後の六本木は大使館の街であり進駐軍の街であり、その異国≒米国のニオイに魅せられた若者達がロカビリーを踊り、ジャズに酔い、ソウルを歌い――そしてその合間々々にハンバーガーを頬張った。
今なおそうであるが、特に戦後のコノ時代、六本木は常に新しいものを発信し続けるトレンドの中心地であった(と言うと横浜の人に「コッチの方が先だよ」と返されそうだが、横浜は「中継地」と呼ぶ方がふさわしいように思う)。六本木に遊ぶ人は誰よりも先にハンバーガーと出会い(この辺も断言はし難いが)、嗜んでいた。
'01年頃まで「Johnny Rockets(ジョニーロケッツ)」という、アチラのハンバーガーチェーンの国内唯一の店舗もあったりで、六本木にハンバーガーがあること――それ自体即ちスタイルでありステイタスであり、常に時流を先行く六本木という街の象徴のような存在だったのである。
●西麻布へ
'71年、マクドナルドが日本に上陸(こちらは銀座に出店)。ハンバーガーはいつでもどこでも食べられる極めて庶民的な食べ物として日本全国に広まり、六本木のハンバーガーは特別な存在ではなくなった。
'05年秋、ハンバーガーイン閉店――かつて六本木のシンボルだったコノ店の、時代の波に呑まれゆくを惜しんで、店の常連であり前オーナーの親友だった老川さんが名乗りを上げて店の名を受け継ぎ、再興したのが今の場所――西麻布交差点近く、ホテルメンテルス六本木の1階である。
●ホームワークス×峰屋=∞無限大?
バーガーイン復興チームのリーダーに招かれたのは、「日本で最初のグルメハンバーガー&サンドウィッチレストラン」広尾のホームワークス(以下「HW」)の店長だった柴田さん。
同じ広尾にある某焼き鳥屋のランチのカレーにKOされて、勤続7年、2年半務めたHW店長の座を棄て、焼き鳥屋に電撃移籍……ところが僅か3ヶ月、まだ「これから」というときに老川社長にヘッドハントされ、再びハンバーガーの世界に舞い戻った。なのでバーガーインのハンバーガーは、食材を積む順番がHW流なのである。
さらに――バンズはなんとアノ峰屋さん!まさに鬼に金棒!HWの技術に峰屋のバンズが出会って、この先一体東京のハンバーガーはどうなっちゃうのかと……。
「バーガーインモデル」のバンズは今なお未完成、調整中。私が食べたものはフワッと柔らかな生地としっかりコシのある生地の中間くらいの、どっち付かずな食感だったが、さらに調整を繰り返して、間もなく落ち着くのではないかとの見通しだ。
●"らしく"なってきた
オープン日はまだ工事中、材料のストックもままならず、見るからに済まなそうに応対していたスタッフだったが、ひと月経って諸々落ち着き、雰囲気がグッと明るくなった。
その後スタッフも続々加入。セネガル出身の"KOZMO"さんは六ヶ国語を操るおしゃべり七色の才人――これで一気に六本木度UP!!そぉ〜こなくっちゃ!!
彼がお客さんとフランス語で話す様子など見ていると、ほんの僅かの間にすっかり店が六本木らしく街の空気に馴染んだことに、「ハンバーガーイン」という名の持つ底知れぬパワーを感じずにはいられない。オープンの日はただの四角いコンクリの箱だった店内に、どこからともなく種が飛んで来、芽が出て、いま大きく花咲いている感じだ。
お客さんはほとんどが付近の違う店で働く人か、住人(!)。来る客来る客挨拶は「ハイ、○○さ〜ん!」ごきげんいかが〜?といった感じ。大都会東京にだって東京なりのご近所付き合いってぇモンがあるわけで。
ちなみに以前のバーガーインの名物店長、インド人のチャンドラーさんは現在も都内でご活躍中。渋谷の飲食店で店長をやっているとのことだった。
●崩れにくい工夫
バーガー9種、サンド4種、ドッグ3種。そして熱烈コールによりメニューに復した復活キーマカレー\1,000。メニューのデザインも限りなく当時のまま。
チーズバーガー\900。やや強めに焼いたバンズの下はピクルス、トマト、タルタルソース、生オニオン、レタス、ケチャップ、チーズ、パティ、下バン。タルタルのオニオンはかなり大きく刻んでコロコロと。薄手のパティは以前のバーガーインを髣髴とさせるオールドな味わいで、チーズとともにさほど目立つ存在ではない。全体には野菜をメインにHW的なシンプルで素直な味わい。峰屋のバンズはやはり味が良く、食感こそやや中途半端な感じではあったものの、タメの効いた甘味が実によく機能していた。付け合せはナチュラルカットのフレンチフライ。
袋は基本的には供さず。そのまま手でどうぞ――とのことなのだが、その代わり積み方にHW譲りの具が崩れにくい工夫がなされていて、事実ある程度角度を付けて持っても雪崩はなかなか起きない。
●ジャニーさんのチリソース
創業者ジャニーさんの書いたレシピを基に、目下、柴田店長以下スタッフ挙げてチリソースを鋭意再現中。但しこのレシピ、如何せん分量などの記録が曖昧なため、当時の味を知る常連さんに味見してもらいながら、手探りで一歩ずつといったところ。
そのチリソースがまた実に「意外」な味である。挽肉メイン、キーマカレーに近いスパイシーで香りの良い一品。"KOZMO"はチリバーガーにエッグ&チーズなどトッピングするのが得意だそうなので、次回はソレで決まり!その名もジャニーさんのホットドッグ\700というチリドッグもあり。生ビールはバドワイザーとハートランドが\580。
●george's
さらに往年の遊び人たちを唸らせる趣向が店の裏手に――
ハンバーガーインのすぐ後ろには、あの「日本最古のソウルバー」(「最初」ではないのか)、'64年に防衛庁ヨコにオープンし、東京ミッドタウン開発に伴い移転(閉店)したあの「george's」が!!まさに六本木の運慶・快慶――違うな。観阿弥・世阿弥?風姿花伝……ってコレも違う。柏鳳?ON?とにかく六本木の歴史を飾る伝説の名店が今やお隣さんですよ。揃い踏みですよ。偶然ですよ。いや偶然じゃないですよ。凄過ぎますよ。この時代モノの濃ゆ〜い空気――コレ、柳沢慎吾がCMしていた「アコム マスターカード」の世界ですよ――♪アコ〜ム、アコ〜ム、アコ〜ム、アコ〜ム、マスターカーーード(←この「ド」の音は4拍目の裏裏ネ)。
私が如き青二才のひよっ子にはgeorge'sのあの白い扉を押し開けるなんざ、とてもとても……。でもこれでひとつ目標ができました――ハンバーガーインでバーガー食べて、george'sで一杯――そんな粋なひよっ子を目指して!!
かつてハンバーガーをまだ誰も知らぬ時代、六本木族を魅了し、東京をリードし続けてきたこの老舗が、平成の御世、バーガーの新たな潮流に乗って、オールドなファンのみならず、果たして若い世代をも虜にすることができるかどうか……!六本木界隈、俄然ヒートアップして参りました!!
→ # 055 The Hamburger Inn [六本木]
【最新情報】 6月25日、西麻布に「一番東京ハンバーガー」がオープン
# 058 Homework's [広尾] ☆
# バンズ― 峰屋 [東新宿] ◆ vol.1 ≪ご馳走≫バンズの誕生
所在地: | 東京都港区西麻布1-11-6 メンテルス六本木1F | |
東京メトロ日比谷線 六本木駅歩8分 地図 | ||
TEL: | 03-3403-7767 | |
URL: | http://www.thehamburgerinn.com/ | |
オープン: | 2007年5月31日 | |
営業時間: | 11:00〜23:00(金土〜翌5:00) | |
定休日: | 無休(要確認) |
2007.7.11 Y.M
ご紹介長らくお待たせいたしました――本年'07年4月26日にオープンした、北千住(きたせんじゅ)のカフェ&バー蜂の巣の2店目。店名のとおりPUBLIC HOUSE、つまり「パブ」である。
●街道筋
東武伊勢崎線北千住から各駅停車で2つ目、五反野(ごたんの)。改札出てスグを商店街が横切っているのだが、コノ通り――地図で見ると、蜂の巣のある北千住「宿場町通り」(旧日光街道)を、荒川を越えてそのまま真っ直ぐ延ばしたかのような道幅・角度をしているので、気になって調べてみると、かつての下妻(しもづま)街道がどうもコノ道だったようなのである。
日光街道は最初の宿場、千住(せんじゅ)で北西に進路を取るのだが、折れずに直進する道筋がこの下妻街道と呼ばれる旧道で、つまり蜂の巣とクローバーは、荒川(荒川放水路。江戸の当時は無かった)を挟んでコノ同じ道沿いに位置していることに……ん?蜂の巣とクローバー……??ヨシッ!わかった!!
●洋酒を楽しめる店
某百科事典では「東京の代表的な下町として有名」とされる千住であるが、五反野もほぼ同左。一杯飲み屋や居酒屋が多くを占めて、いかにも庶民的な、くつろいだ空気に満ちている。そんな下町風情色濃い五反野に「洋酒を楽しめる店を」と考えたのが下町ご出身、オーナー高橋さんがクローバーを始めた理由だった。
アチラのお酒をソレらしい雰囲気で飲もうと思ったら、足立区の人はもっと都心に向かわねばならなかったのであるが、蜂の巣の登場により北千住で味わえるようになり、さらにクローバーが出来たことで、五反野の人は地元の駅前で楽しめるようになったわけである。
パブとはpublic house――公共の家。みんなが集うところ。「第2の家」といった意味で、「家に帰る前にちょっと寄って、サクッと帰る」そんな気軽な飲み方の出来るのがパブの良さであり、その役割は日本の居酒屋とよく似ている。純和風の居酒屋・一杯飲み屋の多い五反野の町に、洋モノのパブは一見不似合いのように見えて、その実「根っこ」ではすごく通じ合う間柄であるかも知れない。
ホームタウンに帰ってからやる一杯は、大都会の喧騒と緊張、そして何より終電の心配から解放されて、胸元を大いにくつろげ、ゆ〜っくりと酒を嗜むことのできる、実に巧い飲み方でもあるだろうか。ちなみにクローバーのすぐ隣が五反野ナンバー1の居酒屋さん。
●蜂の巣は「パブ」
居酒屋同様、パブは食事も充実している。
「パブとバーの違いは?」という話をちょっとだけするなら、パブの気軽な使い方に対し、バーは少し「気構え」て、じっくりとお酒を味わうために行く場所……って、すべて受け売りですが。だからバーはお酒が目的であり、食べ物はほどほど。ゆっくり腰を落ち着けるバーに対し、パブはスタンディングが基本。アチラのパブは昼間からやっているが、バーは夜開く。
蜂の巣は夜のみの営業ながら、テーブルを囲んで賑やかしく飲む様子は、まさに「パブ」。「カフェ&バー」と称しつつも、蜂の巣は実は「パブ」なのである。少なくともオーナーはそう思っている。そのオーナーからの手ほどきのおかげで、最近私もそう思えるようになった。
そんな蜂の巣のパブ色をもっとオープンに、さらにわかりやすく表したのがクローバーである。カウンターはコンパクトに3席程度。あとは例の古いウィスキー樽をリフォームしたテーブルが配されて、酒飲みたちはこの「島」に取り付くのである。ライティングといいレンガ壁といい、おそらくオーナーは、自分の好きな世界を表現することに長けた人である。
●パブとハンバーガー
カクテルなどいただくのももちろん結構なのだが、パブとくればやっぱりビール。日本ではラガーが主流だが、英国ではエールやスタウトが基本。香りと味を楽しみつつ、チビリチビリと空けるのがアチラ流だ。
蜂の巣より生ビールの種類は少ないものの、マリネなど魚介類のメニューはクローバーのみで蜂の巣になく、「両方行く楽しみ」が密かに用意されている。もちろんハンバーガー7種+フィレオフィッシュは両店とも。
「アメリカンスタイルのパブ」とは断っていながら、ここまできっちりドラフトを揃える店で、ここまできっちりとしたハンバーガーが出てくるというのも、よくよく考えたら奇妙な感じである。その辺りオーナー高橋さんのバーガーマニアぶりが、パブの世界に入り込んでいる感じだろうか。
バーガーに使っているオーバルの皿は「いつかハンバーガーショップを始めよう」と、そのときのため個人的に買い込んでいたものだそうで、それ一つをとってもオーナーのバーガーに懸ける尋常ならざる想いが伝わってこよう。
●マニア心全開
そんなわけで毎度のチーズバーガー\900。付け合せにナチュラルカットのフレンチフライとピクルスと言うかコーニッション。
直径小さく、小ぶりなバーガーながらも、酸味の少ないマイルドマヨネーズをた〜っぷり挟み込み、ペッパーもマスタードもピリリとオトナに効かせて、飲みの場にふさわしく塩味強め。出るところがきっちりと出てメリハリの効いた、要所を見事に締めたバーガーである。
もちろんパティとバンズ、ベーシックがしっかりとおいしい故に成り立つ宇宙であって、特にパティは粗さと赤さを程好くそなえ、バーガーの醍醐味をギューッと凝縮させたかのようなおいしさを誇る。押さえるべきシーンがすっかり頭の中にインプットされていて、どこをどうすればバーガーの醍醐味に辿り着けるかを知り抜いた――つまり私が言いたいのは、「食べる側の目線」が多分に感じられるということである。コレは根っからバーガーが好きでないと出来ない。そうした意味ではマニア心全開のバーガーであると言えよう。
本日の作り手はクローバーの店長ブライアン――純粋なるフィリピン人の彼だが、今や日本での生活の方が母国での通算を上回り、日本語は日本人以上。てっきりホールの人かと思い込んでいたら、当夜のバーガーはブライアンの作だった。この積みの美しさはどうだろう!本家本元・オーナーの作はもちろんのこと、この積みの美学はいまや蜂の巣&クローバーの見どころの一つであるかも知れない。
●ボディントンズ
バーガーに合うビールは?との問いに高橋オーナーが応じた答えがこのボディントンズ(BODDINGTONS)\950だった。
後日、ベイカーバウンスの渡邉オーナーに「なぜドラフトにキルケニーを選んだか」質問した折、実は本当に入れたかったのは……と出てきた名前がボディントンズだったときには相当驚いた。ベイカー&蜂の巣、両オーナーが推す生ビール――しかしドラフトの輸入は今年の2月か3月で打ち切りになってしまい、現在国内で味わうことはできない……筈である。
英国マンチェスター産。その名の通りのPUB ALE。「クリーム・オブ・マンチェスター」とも讃えられるキメ細かな泡の粒子が、まるでジャグジーのように舌全体をやさしく包み込んで、口中を甘くクリーミーな味わいで満たす。その細やかな泡の粒子が、料理を一層おいしく感じさせるのである。軽い苦味を残しつつも、クセのない、実にサラリとした飲み口ゆえ、料理の味がよく引き立って、旨いエールを味わいながら同時に料理もおいしくいただけるという、まさしくオールマイティな妙味を持つスグレモノだ。
●バーガーに合うお酒は……
とマスターに訊けば、他にも出てくる出てくる……。「カフェ&レストラン」で挙げているのはブラッディー・シーザー、ギネスのドラフト(←私は×)、ジンジャー・ビアー辺りだが、他にストロングボウのサイダー(リンゴ酒)なんてのも話題に上ったか。
お酒とバーガーなんて、それこそかけ算的な組み合わせであって、だからこそハンバーガーの新たな魅力に出遭い得る可能性に満ちた、実に試し甲斐のある楽しい分野であると常々思っていたのであるが、ちょっと手繰ってみただけでも、まさに宝庫!
ただあまりにも広大な海原ゆえ、やはりその道に明るい人物を宝探しの案内人に立てる必要があるだろう。だからこそ蜂の巣やクローバーのような、勘と引き出しと冒険心に満ちた店が、私たちを率先しておいしい方、おいしい方へとリードしていってくれたら……と、大いに期待しちゃうのである。
ハンバーガーはコーチを必要としている――それこそ街道の"マイルストーン"が如くに。
●北里研究所前
外苑西通りと桜田通りを結ぶバス通りの中ほど。向かいは北里研究所病院、すぐヨコが「北里研究所前」バス停。最寄駅は南北線・三田線の白金高輪(しろかねたかなわ)か白金台(しろかねだい)、ないしは日比谷線の広尾だが、いずれからも14,15分は歩く。交通の便のあまり良くない場所である。渋谷駅東口ターミナルから出ている都営バス・田87系統「田町駅前行」でも同15分。恵比寿からなら5,6分――バスが最も便利だ。
参考:「北里研究所前」停留所 時刻表 渋谷駅前行 田町駅前行
古くからの商店街である。俗に「隠れ家」と呼ばれる、ちょっとイイ感じのイタリアンやら創作料理やらバーやらが点在していて、庶民的な風情の中にも場所柄、ちょっと敷居の高い空気を漂わせている。この街の雰囲気に受け入れてもらえるかどうか――それがこのバーガー店にとっての、まず最初の関門だった。
向かいが大きな病院である点、駅から離れた住宅街である点は駒沢大学AS CLASSICS DINERの立地によく似ている。目白台のbaseにも条件が近い。店の側面は、天井から床まで及ぶ大きなガラス窓になっている。だからバス停から丸見え――その辺りを意識して、キッチンもあえて縦長の店舗の中ほどに配置した。
●ボランチ
オーナー守口駿介君は高校時代、サッカー部の副部長を務め、ボランチとしてゲームをよく壊……組み立てた。憧れの選手はパブロ・アイマール。ポジションは違いますが。
大学進学後、牛角のアルバイトで接客に目覚め、わずか1年のうちに店長代理に昇進。この仕事が何より自分に合っていると気付き、本腰入れて「活きた社会学」を学ぶべく、大学はスパッと1年で中退。ちなみに守口"父"は「一切心配しなかった」とコメントしている。この頃から自分の店を出そうと思うようになった。
「いいカフェないか」と原宿辺をぶらぶらするうち、偶然降りた地下で見つけたのが*easeだった。カッコ良さにゾッコン惚れ込み、即バイト。「料理も出来るようにならないと」と、ここでホールからキッチンにコンバートする。オーナーシェフ・車田(くるまた)氏を除き、当時、*easeのアノ膨大なフードメニューを全て作りこなせるスタッフは唯一、守口君だけであった。
●未来の巨匠
さて、で、守口君の「歓迎会」が開かれたのである。その会場として連れて行かれたのが、本郷のFIRE HOUSE(以下「FH」)だった。コレが彼のバーガーマニア人生を決定付ける。
この時点ではまだ「カフェやる上での目玉メニュー」くらいにしか思っていなかったそうだが、すっかり「世界」にはまり込み、気付けばFH入り。佐藤健(たけし)マネージャー(現Authenticオーナー)の熱血指導のもと、その愛弟子として主にデリバリーショップで活躍。
この頃'05年11月26日放送のTBS「チューボーですよ!」の取材があり、「本郷の巨匠」として佐藤健マネージャーが(モヒカン頭で)、そして守口駿介君は「未来の巨匠」として共に取り上げられ、ゲストの井川遥から「駿介君……頑張って」と激励の言葉を贈られている――のだが、言い終えた井川遥は完全にうつむいてしまう。贈った井川自身も相当なダメージをこうむった、まさに「捨て身」の激励であった。
この「未来の巨匠」の出演が、彼の夢をさらに後押しすることとなる。
●パーティー
*easeに週3、FHに週4――1週間休み無しの驚異的シフトをこなし、早上がりの日にはフルコートのサッカーにいそしむ鉄人ぶり――「フットサルにしとけよ」とは佐藤マスターからのコメントである。
'07年2月に茗荷谷にできたFHの姉妹店FIRE BURGER('08年2月、FHのデリバリーが同地に移転)を(実質的に)任されるが、自身の店の出店準備もあり、*ease一本に専念。ちなみに私が彼と出会ったのはこの頃である。彼が支えるFIRE BURGERを訪ね、一緒にGORO'S DINERに食べに行くなどした。
同年5月に*easeの2店目、THE GREAT BURGER(以下「GB」)オープン。準備に追われ、シフトから外れがちなオーナーに代わり、*easeのキッチンを守り抜いた。
実はこの*ease在籍中、守口君主催による「バーガーマニア」パーティーが、店を借り切って3度ほど開かれている。スタッフも守口君が独自に雇い入れ(たカタチをとり)、ゲストから参加費をとる、言わばレセプション的なイベントを既にコノ頃から試行していたのである。
●オリジン
物件を探すうち、*ease/GBをデザインした、trim tabの福田淳一氏から、事務所近くにイイ物件があるとの報せを受けて、現在の場所に決まった。元はオリジン弁当――別に経営に難があったワケではないようだが、社の方針(か何か)で撤退したらしい。在籍3年7ヶ月、昨年いっぱいで*easeを卒業、年明けからはいよいよ本格的な開店準備で東奔西走、不眠の日々を送った。
店内30席。大きな店である。縦長の店舗の真ん中にキッチンを据え、ホールはその奥。ソファの後ろ、乳半ガラスをはめた間接照明がブリックタイルの壁に陰影を作り、むき出しの天井から下がるランプシェードは光量抑え目。梁は守口巨匠の塗りである。
テラスを囲む花壇はじめ、植物・鉢植え一切は伯母上の監修。テラスに向いた窓は折りたたみ窓になっているから、暖かくなればオープンエアである。
白い食器一式はイタリア・セレッティ社製(カップとポットは違います)――「紙皿のようでいて、磁器。ハンバーガーもファストフードのようでいて、実は本格的な食事である」。
オーナー守口君は、店内のモノ一つ一つが、とにかくかわいくて仕方ないらしい――典型的な子煩悩タイプと見た。喋るほどに歳に似合わぬマニアックぶりが次々露呈してゆく様がおかしい24歳、年男。
●レセプション
2月22日からなんと3日にわたってレセプションパーティーが行なわれ、自称「僕、友達多いんです」ぶりを実証してみせた。最終日はAuthentic、GORO'S DINER、FELLOWSなど名だたる店主が会する豪華な顔触れに(GBの車田オーナーは"研修"で某島へ)。友人・元同僚・同業らに見守られながら、元・未来の巨匠の面目躍如……と言いたいところだが、たぶん本人もこの3日間のことはよく覚えていないだろう。
ビーフパティは国産和牛100%。産地不特定、その都度掲示しますとのこと。数量限定プラチナバーガー\1,500は、キッチンに備えたチョッパーでブロック肉を粗引きにミンチして提供する。バンズはご存知新宿峰屋の天然酵母酒種バンズ。さぁ舞台は整った――あとはバーガーの味である。
●プラチナ
ちなみにレセプションで食べたモノとオープンしてから食べたモノとは、全くの別モノと言ってよいほど味が違った。
チーズバーガー\1,100。当初のバンズはムチムチと目が詰まり気味の生地で、甘さ弱く、やや食パン的。丸っこい味ながら多少クセ持ちだった。今では甘さもふくらみ方も自然で、いかにも峰屋らしい良いアシストをこなしている。
パティは上品な味わい。輸入モノのようなキャッチーな牛クサさがない点、やや物足りなくもあるが、後味よく、特に脂の味わいがやわらかで、美味。2枚重ねのチェダーチーズはバン!と潔い主張。マヨネーズと絡んだときの喉越しがたまらないんだよねぇ〜。ベッタリと粘着質な旨味。それら濃い目の味の下に巧みに隠れながら、生オニスライス"ちょい薄目"がイイ仕事。
今後また味が変わってゆくことも大いに予想されるが、現時点での印象を言えば、さっぱり食べやすい和牛パティの旨味を軸に展開する、ちょっと「かわいい」ハンバーガーという感じで。マヨネーズが強めで、FH的。
●未来の巨匠のゆく「未来」
レセプション時には正直かなりイケてなかったのだが、さすがは巨匠、オープンまでにきっちり合わせてきた。*easeやFHでやってきたことをそのまま再現しさえすれば、間違いなくおいしいハンバーガーを作ることが出来るのだろうが、今回自身の店を始めるに当たり、あえてそれらは置き捨てて、自家製ミンチはじめ、新たな取り組みにいくつも挑戦している。
反面、まだ各食材の特徴をとらえ切れていない、あるいは上手くまとめ切れていないといった部分も感じられるが、それも時間の問題。あと少しすれば必ずや今以上にバーガーマニアの、バーガーマニアによる、バーガーマニアのためのバーガーが"制定"されることと確信する。今さら焦ることもなし――じっくり調整しながらやって下さい。長町場なので体調もネ。
→ # 164 *ease [明治神宮前]
【二ッ目!】 *ease [明治神宮前] のモッツァレラパプリカバーガー
# 178 THE GREAT BURGER [明治神宮前]
# 056 FIRE HOUSE [本郷三丁目]
# 165 FIREBURGER [茗荷谷]
所在地: | 東京都港区白金6-5-7 1F | |
東京メトロ南北線・都営三田線 白金高輪駅歩15分 | ||
都営バス・田87系統「北里研究所前」下車 地図 | ||
TEL: | 03-3442-2200 | |
URL: | http://www.burger-mania.com | |
オープン: | 2008年2月26日(正式には3月3日) | |
営業時間: | 11:30〜23:00 | |
定休日: | 無休(要確認) |
交通の便が良くって、静かで住みやすい。今やすっかり住みたい街の上位にランクされる[要出典]、大井町――。西口、京浜東北線に沿って大森方面に少し歩くと、程なく道は下り坂に。ちょうどその下りかけた辺りにコノ店はある――もちろん、店の運気は上り坂。
●大井町(Oi, Shinagawa City)
この大井町、都心へのアクセス良好、人気の街ではあるのだがしかし、改札出ると再開発の申し子が如き人工地盤がデンと幅を利かしているワケでもなく(ペデストリアンデッキと呼んだ方がわかりよい?)、航空障害灯が赤く明滅するタワーマンションが厳(いか)つくそそり立っているでもなく、従来の「大井町」の規格を守りながら、商店街あり飲み屋街あり、無理なくまとまったその程好いサイズが、この町最大の魅力である。ひと言で言うなら……住みたい!
さてこの店、トラストサルーン――前はJR、後ろに住宅街を従え、「帰る前にもう一杯」という使い勝手の立地である。外観は最低限のアイキャッチ、かなり抑えた感じだが、「ホントは(店内に)バイク入れちゃいたかった」というオーナー中山さんは大のハーレー好き――愛車はFXST。スペースさえ広ければ、シルバージュエリーや自作のレザークラフトの売り場も設けたかったという、長年アパレル業界で活躍していた人である。
●鉄馬の友(Dutch Oven)
デザイナーとして渋カジ全盛の頃を経験。ときには売り場にも立ったが、「洋服屋さんって、100人お客さん来たら10人買うかどうか」という、その「売れるか分からないストレス」というものが「すごくイヤで」、片や飲食業という、目の前のお客さんに全身全霊を挙げて臨めば、それが必ずや結果へと繋がる商売(「飲食店は来たお客さん全員注文をする」)に、職業としての魅力をより強く感じていた(同様のことをLATINO HEAT田辺さんも言っている)。
父は中華の料理人だった。門前の小僧、料理は昔から得意で、特にキャンプにおいてその遺伝子は発揮される。
HDO、「ハーレーとダッチオーブン」なる会に所属するダッチオーブンの使い手である。鍋を片手に「クラブハーレー」なる専門誌(我らがエイ出版刊)の表紙を飾ったこともある。特集タイトル「鉄馬に乗った旅人へ、ダッチ・オーブンのススメ」――割れ鍋に綴じ蓋、鉄馬に鉄鍋。
キャンプにおける本式は、まず炭を作り、その上に鍋をかける。圧力釜と同様の効果により、おいし〜いローストビーフやチキンや何やが、ただ放って置くだけで出来てしまうという手間要らず、まさに男の料理の至上。ローストチキン\2,000(ゲームヘン使用。要予約)はこのダッチオーブンによる自信作。「ニンジンがまたおいし〜い!」と自慢されたが、何だよ話だけかよ、こちらも要予約(泣)。
●ジェダイ(Jadeite)
バーがやりたかった。
実家の建て替えに乗じ、その一角を間借りしてバーにしようと思っていたのが場所柄、深夜に酒類が提供できない地域であったため、食事も合わせて出すべく方針転換。父は中華、じゃあ僕はヌーベルキュイジーヌ……だけどちょっと待てよ。どうせやるんならキラーコンテンツを――ということで、己の趣味と経験の延長線上に結ばれた"交点"にはハーレーがファイヤーキングが、そしてハンバーガーが燦然と輝いていたのである。
店内は米南西部、メキシコ風なエッセンスを盛り込みつ、田舎風。ペンダントの下にはビリヤード台が似合いそうだ。テーブル8席にカウンター5席という目の届く空間に、売るほど置いてあるファイヤーキングだジェダイだ何だは、eBayで少量ずつ買い集めていった成果。棚にはホントの売り物あり、アドマグあり、佇立するmomokoドールあり、その書割はトミー・ボーリンの『The Ultimate...』であり(←限定盤)。ハンバーガーに合う「かも」との話から登場したジャックダニエルのグラスもコレ、60年代に生産されたヴィンテージもの。
●スキレット(Skillet)
メニューは簡にして要、実にシンプルで読みやすい作りなのだが、上部の英語だけなぜかファイヤーパターン。
バーガー7種類。チーズバーガー\1,100。フレンチフライにピクルス、さらにはオニオンリング("オニリン"ね)まで付いてコノ値段とは安っ!バンズの下におとなしめのタルタル、それを乗せたトマト、レタスは玉、チーズはチェダー、パティの下にグリルドオニオン、下バンズ。
バンズはなんと自家製。朝食の食パンはずっと自分で焼いていたという。「もっちり」とした食感と風味を出すべく、水でなく牛乳を使用。神戸屋キッチンにハースブレッドという、やはり牛乳を使ったパンがあるが、まさにあんな感じの、目の詰まったやや重めな生地で、その「自重」を使い、上下から中の具材を巧く挟み込んで、ハンバーガーとしての安定感がある。
パティは100g。100%穀物肥育のオージー(と、和牛の脂)。スキレットの遠赤効果で、しっかりした焼き上がり。赤身メインの締まった肉感で、この噛み締める食感が巧く効いて、赤身がおいしいハンバーガーにまとまっている。確かにジャックダニエルはいけるかも。
邪魔をしないバンズのサポートが良好。オニオンは「水にさらすと養分抜けちゃうので」グリルに。少し甘味が目立ったが、帯びた熱がまたバーガー全体に好影響。あとセサミのひと乗せでもあれば変化が付いて、さらに良いだろうか。どこかにキュッと締める味が欲しい。良質な食材と精緻な研究に裏打ちされた、まさに信頼のバーガー。夜のお店なのに何だか健康的。ドラフトは水のようにゴクゴクいけるバド――夏向きである。
●安全と信頼(Trust)
バンズが自家製ゆえ1日に10〜15個程度と、出せる数は少ないが、その分手をかけ、材料を吟味し、品質の良さと安全・安心を掲げてやっている。信じられるものだけを使い、信じられるものを提供する――食の安全と信頼が大いに揺らぐ今日なればこその、大いなる挑戦である。
ベーコンエッグバーガー\1,200に使う玉子は、千葉県某所の山中で放し飼いにされているシャモの産。濃厚な黄身の色と表面の隆起が猛烈に食欲をそそる(が、入荷できない日もあり)。
信じられる友と酒を酌み交わし、信ずる音楽、バイクを語り合う――ジェダイの食器群のおかげか、カウンター周りはすっかり翡翠(ひすい)色。近所に欲しい、ちょいちょい腰を落ち着けたくなる店である。
この夜のBGMと言うか"BGV"は、1本目『ゴーストライダー』('07)、ニコラス・ケイジ跨るはパンヘッドの"チョッパー"。2本目が傑作!『プッシーキャッツ』('01)、正直一発KO!何でコレが日本未公開?いいから観なさい。見どころ満載のクセになる面白さ(こういう精神の雑誌が作りたいのだよネェ……)。
こうして幼気(いたいけ)ない客がまた一人、酒場の主の術中にハマってゆく……それでも平和な大井町の夜。
所在地: | 所在地: 東京都品川区大井4-10-7 アルテール大井1F | |
JR京浜東北線・りんかい線・東急 大井町駅歩5分 地図 | ||
TEL: | 03-5742-3302 | |
URL: | http://www.trust-saloon.com/ | |
オープン: | 2008年5月10日 | |
営業時間: | 18:00〜26:00 | |
定休日: | 月曜日(要確認) |