―― ハンバーガーストリート とは ――

……この密やかなページについての長たらしい説明

事の始まり
発端 2004年6月、闘病中の友人Tarah Chang を東京の某路加病院に見舞った折、「しばらくふたりだけに――」と看護婦(士)を下がらせるので、何ごと……と思い枕元に近寄ると、息も絶え絶えにこう言うのである「おっ……美味しいハン……バーガー……食べ……たい……」。余命幾許も無い友人の儚い望みを託された私は、廊下で主治医に「美味しいハンバーガーを食べさせれば、本当にこの病気は治るんだな??」と執拗に詰め寄って、ついに渋々首を縦に振らせると、次の瞬間には長い廊下を帝都・東京の大海原に向かって走り出していた。いったいこの巨大都市の何処に美味しいハンバーガーがあるのか、皆目見当も付かぬまま――
伏線
本線1
2004年3月、
ウェンディーズの市場調査のモニターになり、店の存在を再認識して
伏線
本線2
2004年5月、
函館でラッキーピエロを食べ損ねて(しかし2006年8月、2年越しの宿願を叶える
旧名 ハンバーガー"隧"道(2006年10月7日改名)

最初にアップした日
2004年6月12日、ウェンディーズ。但し「推賞」の中の一文として。ハンバーガー"隧"道としては2004年7月13日「青春編」。今読むと文章と観察眼が非常につたない……

目的
簡単に言うとハンバーガーの本来の姿が知りたかった。
'71年7月のマクドナルド日本1号店登場以来、この国ではある意味マック=専売公社状態でハンバーガーという米国の食べ物が作られ、売られ、語られてきた。当然、私にも長らくそんなアタマしかなかった。ところがそこに来て前述のウェンディーズのハンバーガーにはトマト、オニオン、レタスが標準装備されていたのである。ン……?スタート地点がまたエラク違うな……そこで思った――ひょっとするとマックのハンバーガーはかなりアレンジの加わったものであって、本来の形とは随分とかけ離れているのではないかと。では本来のハンバーガーとはどんなモノで、本場米国ではどう食されているのかと。そしてどこをどう合理化・簡略化すると、マックのハンバーガーになるのかと。さらに我々日本人は、その究極に合理化された物事の一片のみをもって"ハンバーガー"という食べ物について判断しているのではないかと――。

しばらく「原形」の探索を進めるうち、さらに判ったことがある――日本へのハンバーガーの伝来を、マクドナルドをもって「表」とするなら、それとは全く違う経路で伝わった、云わば「」のハンバーガーが存在するという事実である。それは佐世保であり、六本木・飯倉であり、あるいは仙台であるワケだが、それら「裏」ルートこそヨリ本来の形を留めているのではないかと考え、調査の輪はさらに広がった。

パン党だった私は、世に出てからはハンバーガーなんぞ食べる機会はほとんど無くなり、年に2度口にするかしないかという時期が長らく続いたし、消化器官を悪くした折には肉も油も体が全く受け付けず、アノ特有な油のニオイの漂う○ックの店の前を通るだけで軽い○気を催す――という頃もあったのである(今デモソウカ……)。なので正直言って私はこの食べ物に対し、異常な愛情など実はこれっぽっちも持ち合わせていなかった(←一応過去形)。そんな私がいま興味津々で調査に励んでいるのは多分、世の中の大半の見方と実体との相違――といった辺りに強く惹かれるものを感じたからだろう。

ハンバーガーの起こり
東京パン屋ストリートで見つけた説明によれば「1904年、セントルイス万国博、会場は押すな押すなの大混雑だった。広場のスタンドでハンバーグを焼いて売っていた店が、そのままではアツくて持てないハンバーグを、食べやすいようにパンにはさんで売り出したところ、おいしくてしかも見物しながら食べられると大評判に。ハンバーガーのはじまりといわれている。」とのことであり、WEB上の某百科事典でも同様な記述が見られるので、通説と見てよいと思う。但し自分自身で調べ上げたものではないので、その点ちょっと不甲斐無いですが……。いずれにせよ上の説が本当なら昨年2004年でバーガー誕生から100年。なのでちょうど節目の年に当"隧"道は"着工"したことになるワケである。

当"隧"道におけるハンバーガーの「定義」
条件は二つ――

  1.上下をバンズで挟んであること
  2.バンズの間にパティが挟んであること(できれば牛肉の)

バンズ(bun)だが、パンの会主宰・渡邉政子さんの著述によれば「アメリカで食事用のパンとして一般的に食べられている」テーブルロールの一種であり、「甘めのテーブルロール」という言い方も出来ると。ロールパンという意味ではフランスのブリオッシュ、イタリアのロゼッタ、ドイツのカイザーロールなども同種ということになる。確かに「ブリオッシュバンズ」と謳っている店も在るので、その辺多少広く考えてもよいかも知れない。一方で世界各国のロールパンにパティを挟み込めば各国なりのハンバーガーが出来上がる――と言えばそうなのだろうが、しかしそれらについてはローカルルールと考えたい。なので飽くまでバーガーの基本はアメリカのテーブルロール「バンズ」を使っていること。

中身――パティ(patty)以外のものが挟んである場合、それはハンバーガーとは呼ばない。ハンバーグ=ハンブルグステーキが挟んであるからこそハンバーガーと呼ぶわけであって、白身魚が挟んであればフィッシュサンドであり、コロッケならコロッケサンドないしはコロッケバンズと呼ぶのが適当だろう――と思っている。

ところでハンバーグというのがまた厳密を要する部分である。「牛肉などのひき肉にパン粉・みじん切りのタマネギなどを交ぜ、平たく丸い形にして焼いた料理」【新明解国語辞典】というのがおよその意味なのだが、本格的なハンバーガーに用いるソレは牛肉100%・つなぎなしである場合が多く、逆に本物のハンバーグが挟まっていると味がキツ過ぎて、ハンバーガーとしてのバランスはもう一つよろしくない。とは言え世の中ハンバーグを挟んだバーガーも多く、中には絶品も存在するので、つなぎの有る/無しは選ばないことにしたい。また出来れば「牛100」が望ましいのだが、それでは市井のハンバーガーを全て救い切れるかどうか、おおいに疑わしいので、そこもこだわらないことにした。安いモノには安いなりの良さがあり――

条件と呼べるものは以上二つと思っているが、ついでに残る野菜その他――については今しばらくの猶予をいただきたく……。挟む食材も、調理の仕方も工夫も各店各様に様々で、その中から「原形」を見極めるに足る、ある種一定の法則性のようなものを導き出すところまで私の考えが至っていない――と言うか要は整理が付いていないので。

☆ 特にオススメについて ☆
はじめは得点など付けて評価する気など全く無かった。シロウトである私がプロの仕事に対して感想を数値で表すなど、おこがましいにも程があると思っていたのだが、友人からの強い要望があって、それで特に印象に深かった店/ハンバーガーについてのみ「☆」ひとつを付けて、中でも一食に値するものであることを示すようにした。「☆」をひとつにしておいて本当に良かったー!とつくづく思っている。☆5つで満点などとやっていては、とてもじゃないが評価など出来やしない。「アノ店が☆4つだったからココも☆4つか……イヤ、☆3つ半だな。だったらこないだの店の4つは……」などという際限無い調整が繰り返されるだけである。

――とりあえず以上。後日追加します――

(2006.10.7)