ハンバーガー"隧"道

ベストバーガーショップ'04


――ハンバーガーという食べ物がこれだけ世界に広まったのは、ともあれマクドナルドの功績に違いない。しかし同時に、日常的に口にする機会がこんなにも多くありながら、その味についてこんなにも語られることのない食べ物というのは、むしろ哀れむべき存在かも知れない。

 その安さと気軽さばかりが注目され=利用されて、ただ短時間に胃袋に押し込むためのものという位置付けに成り下がってしまった食べ物―ハンバーガー。道ゆく人に「あなたの家の近くの美味しいハンバーガーショップを教えて……」と尋ねても、きっと返答に詰まるであろう食べ物―ハンバーガー。そう、ハンバーガーからマクドナルドを取り去ってしまえば、とたんにこの食べ物はマイナーな食べ物へと墜する筈である―少なくともこの国においては。マクドナルド抜きのハンバーガーなんて考えられないが、しかしそれこそがこの食べ物に植え付けられた「不幸」なのである。マクドナルドの功罪はまさにそこにある。

 もうひとつの国民食=ラーメンとハンバーガーとでは話題の広がり方に雲泥の差がある。

 たとえば何処かの商店街にラーメン店がオープンする。商店街の人たちは老いも若きもほぼ全員、まずその事実=ラーメン店開店を知っていることだろう。そしてホントにどんなことでも良いから、ちょっとでもメニューに特長があれば―たとえば上にアユがまるごと一尾乗っているとか――そんな荒唐無稽なことであったとしても、それだけで雑誌に取り上げられ、店前に行列が絶えなかったりする(←最初のうちは……)――これがラーメンの場合。

 ところがハンバーガーではそうはゆかない。仮にその店がどんなに特色ある、美味しいバーガーショップであろうとも、おそらくそのことを地元商店街の誇りに思う人はそう多くは居ないだろう。なぜならマック以外のハンバーガーの味が想像できないから。マック以上のハンバーガーを特に求めているわけではないから。つまり、ハンバーガーに対する根本的な興味と関心が無いから――なので大概のハンバーガーショップの佇まいは比較的ひっそりと街の外れにかろうじて身を置いている体なのである。

 本当にマックによって――そしてデフレによって――前途に無数の無用なハードルを設けられてしまった食べ物である。

 たとえば価格――私は本場米国のハンバーガーの相場を知らないが、少なくともこの国において、800円のバーガーが売り出されようものなら「ハンバーガーに800円も払うなんて……」とそれだけで敬遠されてしまう。確かにその心もよくわかる。わかるし、ただ無闇に高級化させればよいというものでもない――という意見にも賛成する。さらにコストパフォーマンスを著しく欠くバーガーも考え物だとは思う。しかしかと言ってねぇ……安くさえあればどんな不味いバーガーでも受け入れられるかと言うと……。国産ファーストフード=そば・うどんには安かろうの立ち食いもあれば座敷でいただくような高級店もあるというのに、なぜ同じことがハンバーガーには許されないのか。既成概念に対してもう少し柔軟になっても良いのではないかと、そんな気もする。

 さてそんなこんなで当サイトは、「"○○バーガー"と付くものならなんでもOK!」のハンバーガー党というより、リーディングカンパニーとして当然励むべき品質への努力を怠り続けてきたがために、業界全体を、いやハンバーガーという食べ物の存在そのものをいたくつまらないものにしてしまった某社により奪い去られたハンバーガー本来の美味しさ喜びを、味わってもらおうと日々努力するハンバーガーショップ諸店の擁護に回ることにした。

 おこがましくも2004年本年のベストバーガーショップは、ハンバーガーが本来こんなにも熱〜い食べ物であることを教えてくれた以下の各店に選定したい(なんだかエラそうだな……。そして以下安いつくりですが……)。

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ベストバーガーショップ'04

ZATS BURGER CAFE [中野]

……佐世保の味を中央線テイストで伝えるクールなお店

LOG KIT [佐世保]

……多分みなさん行けないけど、
熱〜いのにすーっと落ちる喉越し

BROZERS' [人形町]

……BBQソースがちょと辛いがビジュアル完璧!

緑モス

……脱ファストフード!
その取り組む姿勢と、なにより居心地の良さに

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ベストコストパフォーマンス'04

――質・量・価格のバランスに優れたバーガーを選定

ウェンディーズ

……食べ応え・額相応以上の味、やはりウェンディーズ!

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以上、中間報告に代えて。来年2005年がみなさんにとって
良いバーガー元年になることを祈りつつ……

2004.12.31 Y.M