― ベストバーガーショップ'06 ―



 毎年"一応"やってはいるが、ご覧とおり、そう身を入れてやってきたワケでもない('05年の発表は1月16日だし)。まぁ時季が時季ですから。でも今年はちょっと真面目にやってみようかと、そう思い直した2006年の年の瀬。

 2006年、この一年の間に新たに足を運んだ店は#105 ウェスティンホテル東京から#158 Paraiso Brasilまで53店。ほぼ週一で違う店に行った計算になる。

 さて今年2006年のベストバーガーショップは、この53店の中から選ぶのか、ソレ以前のものは完全に除外されるのかなど、その選び方について多少はアレコレ悩んだのだが、結局最も素直に、西国の旅・北海道の旅を含むこれら計53店の合間々々にコツコツと通い詰めた「ヘヴィローテーションな店」3店を選出することとした。

 これらの店は、友人らから「おいしいハンバーガーが食べた〜い!」とせがまれたときに、自信を持って案内することのできる3店でもある。

 何事も出会いは大切。「ハンバーガー初めて」という人には、必ずこれら3店のうちのいずれかを薦めた。食べれば間違いなく、そして一発でハンバーガーの虜になる――そんな確信と安心を持って臨むことのできる店である。

 もちろん私の住所・生活圏なども多分に影響した選択ではある(特に「行きやすさ」という点で)。なので東京の「真ん中から北」や「真ん中から東」、あるいは「ウンと西」に、もっとずっとおいしいハンバーガーがひょっとすると在るかも知れないのだが、まぁソレはソレ。2007年の楽しみにとっておくことにして、ともあれ今年一年、毎度おんなじ店に飽きることなく「よく通ったなぁ」という感慨とともに、'06年12月末現在の我がベストとしてココに書き出しておくことにする。

 今年一年間、いつも変わらぬおいしいハンバーガーを食べさせていただいた、感謝の気持ちを込めつつ、以下……

→【AS CLASSICS DINER
→【GORO's DINER
→【BROZERS'



AS CLASSICS DINER

[駒沢大学]

◆ ハンバーガーの向こうにアメリカの大地が見える ◆

 とにかく広い。大人数で集まるときなどに何度も利用させてもらった。他の2店と違い、「6人だけど、席空いてるかな……」といった類の心配をしなくて済むキャパを持つ。生ビールはハイネケン。コレがなかなか!ゴクゴクとゆけて美味!(ギネスもアリ)

 コノ店に連れて行った友人たち、特に男性は皆、その惚れ惚れするような店の造りに深い感銘を受けて、手放しの賛辞を口にする。

 頭で思い描くことは出来ても、しかし現実にカタチにすることは出来ない――誰もが抱くそうした理想の"像"を、細部に至るまで一切の妥協なく、思うままカタチにしてみせた――そんな透徹した世界観、ないしは"男気"のようなものに、ある種胸の空くような、爽快なものを感じるのだろう。


 その透徹ぶりはハンバーガーにおいても全開。バンズの間に挟むものは全部手作りにしようと、BBQソースもケチャップもマヨネーズもベーコンも、すべてがホームメイド。

 ASのダイナミックさを堪能したければ、炭火で焼いた豪快パティの上に自家製ベーコンが立体的に盛られたベーコンチーズバーガー\1,365辺りが定番だろう。炭火焼きパティの威力に任せ、強引に力で押し切るのでなく、ダイナミックな肉の味でグイグイ攻めまくりながらも、一方でバーガー全体のバランスがきっちり絶妙に図られている。


 ASのデリケートな一面を味わうなら、オニオンマッシュルームバーガー\1,365がオススメ。

 食欲をそそるスモーキーなパティの匂いに乗って、フレッシュマッシュルームのふくいくたる香りがフーッと押し寄せる逸品。スクラッチしたオニオンをフレッシュマッシュルームと軽く炒めてパティに乗せ、上からエメンタールチーズがとろ〜りと絡む。豪快なパティと繊細なマッシュルームが織り成す対比の妙を、じっくりと楽しみたい。

 友人の言葉を借りれば、本場アメリカ以上にアメリカな、理想のアメリカンスタイルを追求したダイナーとでも呼べようか。なのでASの作るバーガーは、本場アメリカの"正統"を常に意識しながら、さらにそれ以上に、もっとおいしくなるよう考えを凝らし手を尽くした、本場アメリカ以上にスタイルを極めたハンバーガーである――と言って間違いではないだろう。

 ハンバーガーの向こうにアメリカの大地が見える――そんなハンバーガーが作りたいと話すマスター。ハンバーガーはアメリカンダイナーの"顔"であり"看板"であり、言わばダイナーのすべてを集約した存在である。そんなハンバーガーという"窓"を通じて、その向こうに憧れのアメリカ、雄大なアメリカの光景が望めたらと、その想いはどこまでも遠く、そして大きい。オープン2年目の冬、自慢の赤い薪ストーブには真っ赤な炎が静かに揺らいでいた。

→【初めて食べに行ったときの記事
↓【GORO's DINER
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― shop data ―
* AS CLASSICS DINER *
所在地:東京都目黒区八雲5-9-22 オリオン駒沢ビル1F
東急田園都市線 駒沢大学駅歩15分ほか 地図
TEL:03-5701-5033
URL:http://asclassics.com/
オープン:2005年12月
営業時間:9:00〜23:00(22:30LO)
定休日:火曜日(要確認)
新年の営業:6日土曜日から



GORO's DINER

[外苑前]

◆ 小さな店に広がるハンバーガーの無限の可能性 ◆

 「ハンバーガーをナメていた」とマスターはいう。

 三宿にあるサンドイッチの人気店
FUNGOで店長を務めていたことも確かにあったが、他にも美容師、焼肉屋、焼き鳥屋、ホテルマン、そば居酒屋、今をときめく某デリの店長等々、そのキャリアは実に広く多彩で、「まさか自分がハンバーガーをやるなんて」夢にも思わなかったというのが本当のところらしい。「軽飲食のみ」という今の店舗の契約条件のみが、GORO's DINERがサンドイッチとハンバーガーを出す店になったほぼ唯一の理由である。

 FUNGO店長時代、オーナーからの命で研究したとき以来のバーガー。しかもこのときは商品化までに至っていない。準備も知識も足りないまま店がオープンして、作るほどにハンバーガーの難しさを思い知らされたというが、むしろそうしたハンデをバネにして、いまのGORO'sのスタイルは確立されたと言うべきだろう。

 今回取り上げた3店の中では最も独創性の強い、自由な発想によるハンバーガーを作る。本来ボトルネックであるはずの「店の狭さ」をむしろ味方に付けて、常に遊び心に溢れた実験的なバーガーを果敢に繰り出している。

 とは言えそれは「珍種」や「別種」の開発ではなく、「ハンバーガー」という通念または世界観を飽くまできっちりと踏み押さえながら、これまでのさまざまな調理の経験を活かして、その世界に広がりと可能性をもたらすような試みであって、なのでGORO'sのハンバーガーは、この上なくハンバーガーなのである。

 甘辛いスイートチリソースを主役にレモンを絞っていただく、taste so sharp アジアンバーガー\900、ベーコンエッグチーズ+ケチャップ&マヨネーズ(とマスタード)という佐世保と同様のセットながら、それでもGORO'sの味がするアメリカンバーガー\1,250、ベーコンエッグチーズ+おたふくソースに鰹節、海苔etc...というお好み焼きアレンジながら、イロモノや変り種に終わらぬ絶妙なバーガーハーモニーを醸すジャパンバーガー\1,250と、どれも「ン」の付くコノ秋の新作も多彩。


 中でもアメリカンバーガーはGORO's流の真骨頂。無茶無茶振ったケチャップにマスタード、タルタルの代わりに入るマヨネーズ、垂れ出すチェダーチーズ、厚切りベーコンにターンオーバー(目玉焼き)と、すべてに勢いがあって攻撃的、しかも見事にバランスが整えられているという、GORO'sの技術を遺憾なく発揮した逸品。しかも――これだけ混沌としたケチャ&マヨの"海"の中にありながら、それでもはっきりと味がする峰屋のバンズの「強さ」と言ったらどうだろう。

 その小さな店のうちに、無限の可能性と広がりをギューッと凝縮させた店――それがコノGORO'sである。

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― shop data ―
* GORO's DINER *
所在地:東京都渋谷区神宮前3-41-2 岡本ビル1F
東京メトロ銀座線 外苑前駅歩5分 地図
TEL:03-3403-9033
URL:http://gorosdiner.com/
オープン:2005年4月
* 営業時間 *
月〜土曜日:11:30〜22:00(21:30LO)
ランチ:11:30〜16:00(月〜金のみ)
日・祝日:12:00〜18:00(17:00LO)
定休日:不定休(要確認)
新年の営業:4日木曜日から



BROZERS'

[人形町]

◆ 王道にして孤高の味とバランス ◆

 誰もが頭の中で思い描く本場アメリカのビッグなハンバーガーのイメージを、そっくりそのまま再現してみせたのがBROZERS'のハンバーガーである。運ばれてきた瞬間、頭の中のイメージとバチッと噛み合って、まだ口にする前から我々の欲求は十二分に満たされる。何か極めて普遍的なものを身につけたバーガーであるように思う。

 しかも、これだけ正統・王道をイメージさせながら、他に似たものが見当たらない。

 たとえば、以前どこかの店で働いたことのある人が始めた店なら、その店の味や作り方が自然と身について、はっきりと系統を辿れる味になるものだが、しかしBROZERS'にはそれがない。ワン&オンリー。孤高の存在と言ってよいだろう――少なくとも日本国内においては。

 正しくは、オーストラリアはシドニー近郊の、町の小さなハンバーガー屋さん(日本で言えばもんじゃ・お好み焼き屋的存在という)の味を継承している……というのだが、しかしそれもソノ店が既になくなった今となっては、どこまでをソノ店から受け継ぎ、どこまでがマスターの創意工夫なのか、おそらくマスターご本人とシドニーのソノ店の元オーナーにしか正確なところはわからない。なのでその話は置いておくとして、とにかく知る限り、同業である都内バーガー各店からの支持は相当なものがある。




 BROZERS'のバーガーの真の凄さは、その見た目、上背……と言うより、これだけの高さに積み上げながら崩れない、その抜群のバランスにある。

 レタスをキレイに折り畳むのはBROZERS'流だが(注:同様な手法の店は他に多々ある)、普通に考えれば切って重ねた方が安定は良いわけで、それをあえて畳んで、かつこれだけのバランスを保っているというのは、実に驚くべき技術なのである。一分の隙もないその姿には風格すら漂う。

 味の構成は実に明解。見たままのカラフルな具材が見たままに混ざり合う。しかしその混ざり方は「混沌」「混迷」ではなく、実に「おいしい調和」である。

 たとえばロットバーガーwith BBQソース\1,350(私はほとんどコレしか頼まない)。普通これだけ食材を積み上げれば、味のバランスなどロクにとれずにグヂャグヂャになって、見た目ばかりの"曲芸"に終わるべきはずのものが、しかしロットバーガーについては全くそうではない。見事にバランスコントロールされ、味の交通整理がきちんと付けられている。

 それはチーム力である。「エースで4番」というようなズバ抜けたスター選手が1人いるわけではなく、個々のメンバーの力の結集による総合力。そしてまとまり。足し算でなく掛け算。ただ「積むだけ」の作業から、どうすればココまでの味と旨みが生まれるのか。その単純な作業の積み重ねにこそ、ハンバーガーの底知れぬ魅力を感じる。しかもそうした技術を何でもなく見せている辺り、輪をかけて流石!

 しっかりとしたバランスを保ちながら、しかし小さくまとまることなく、実にハデやかで豪快なエンタテインメントで魅了する。いつ食べても何度食べても思わず唸ってしまうのである――ハンバーガーはやっぱりこうでなくっちゃ!!

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― shop data ―
* BROZERS'*
所在地:東京都中央区日本橋人形町2-28-5 月村マンション1階
東京メトロ日比谷線・都営浅草線 人形町駅歩7分 地図
TEL:03-3639-5201
オープン:2000年7月
* 営業時間 *
平日:11:00〜22:00(21:30LO)
日・祝日:11:00〜17:00(16:30LO)
定休日:月曜日(但し祝日の場合、翌日休)
新年の営業:6日土曜日から


2006.12.31 Y.M